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久保建英が残留導くゴールでユニフォームにキス 「《本物の天才》と呼ぶのは…」2年目の苦闘を予見したエムボマの評価とは
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byMutsu Kawamori
posted2021/05/17 17:02
決勝ゴールを決めた久保建英は珍しく感情をあらわにした
鋭い弾道を描いたボールはGKの“ニア上”を襲う。反応すら許さない一撃はゴール左隅に突き刺さった。勝ち点3に大きく近づく一撃が決まると久保は両ひざをついてピッチへと滑り込み、チームメートと狂喜乱舞する。そして珍しくユニホームを脱いで自らの「背番号5」を掲げるなど、感情を爆発させた。
「一生懸命トレーニングを続けていたし……」
ヘタフェは2-1で勝利したことにより、1部残留を確定。「AS」紙は久保に3点満点をつけるとともに「久保のなんて素晴らしいゴールだ」「日本人による大きな一撃で(ヘタフェの)苦悩は終わった」と称賛している。
「マルカ」紙によると、久保は試合後のインタビューで「今季はビジャレアルとヘタフェでとても苦しみました」、「(試合で)プレーできないときも、一生懸命トレーニングを続けていたし、監督もそれを見てくれていた」と明かしたという。
苦しみ葛藤を抱えたシーズンとなった久保。冒頭の言葉は今年1月、ビジャレアルとの契約を打ち切り、ヘタフェに異例の“再ローン移籍”を決断した際のコメントである。
「僕はまだ若くて、出場時間と自分が選手であると感じられることを必要としています。環境を変えた理由はそれ以外にありません」とも語った。自らの課題と向き合いつつ、試合に出ることの重要さを19歳にして、強く意識している。
昨季ラ・リーガでのデビューシーズンとなったマジョルカでのリーグ戦4得点に比べると、スペイン2年目は芳しくない結果だったのは事実だろう。だからこそ自らがチームを残留へと導く勝利に大きく貢献できたという喜びに、感情を爆発させたのかもしれない。
エムボマが口にした才能と懸念
<名言2>
久保に対しては、メッシやネイマール、ムバッペと同じレベルの《本物の天才》と呼ぶことへの躊躇いを感じている。
(パトリック・エムボマ/NumberWeb 2020年9月21日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/845088
◇解説◇
ラ・リーガ2年目となった2020-21シーズンの久保建英は、移籍市場の段階から去就が注目されていた。レアル・マドリーに残って序列を上げるのか、それとも武者修行を続けるのか――彼が下した“1回目の決断”は国内でも屈指の強豪ビジャレアルへのローン移籍だった。
そんな久保について興味深い評価をしていたのが、エムボマだ。
「素晴らしい才能であるのは間違いない。ドリブル、シュートの能力、プレーの視野……。久保は本物のフットボーラーの資質をすべて持っている。19歳という年齢で彼はすでに成熟している。日本人としては驚くべきことだ」
かつてガンバ大阪などJリーグの舞台でゴールを量産し、カメルーン代表としても五輪金メダリストになったエムボマは、久保についてこう認めていた。現在はフランスのテレビ局でラ・リーガの解説を務めており、とってつけた評価ではないことが分かる。
ただしその一方で、《本物の天才》ではないという表現でクギを刺している。