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戦力外通告の筒香嘉智、「マイナーを選択」はプラスに働く? 天才肌ではない男の“牛歩”と37歳の松井秀喜が語っていたこと
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/14 17:01
レイズから事実上の戦力外通告を受けた筒香。他のチームから声がかからなければ、マイナーか日本かを選択することになる
マイナーでのプレーがプラスに働く?
ただ、それをどう具体的に打撃に反映させて、自分のものにしていくか。試行錯誤を繰り返して、1つずつ課題を潰していくしかない。すぐさま結果に結びつけられるような器用さはない。
それもまた筒香らしさだと思って見ていた。
だから逆に改めてマイナーでプレーすることは、もう一度、メジャーを目指す過程としては、筒香にはプラスに働く可能性もあるのではないかとも思うのである。
コロナ禍で変則的なシーズンとなったメジャー1年目の2020年。筒香がオープン戦を含めて打席に立った回数は356打席にしか過ぎなかった。そして今季がオープン戦を含めて130打席である。合計すると486打席。これは通常シーズンと比べれば、フル出場する選手の年間トータルにも届かない打席数である。
もっと打席を経験することで、見えかけていた「何とかなる」という実感を、形に変えて結果に結びつけていくことにつながったのかもしれない。
もちろんそういう過程を踏んでも、最終的に結果が出ない可能性もある。ただ、もう少しだけ時間をかけて、チャレンジする。筒香という選手の可能性と不器用さを考えたときに、それも1つの有力な選択肢としてあるはずだ。
忘れられない2012年の松井秀喜
2003年にニューヨーク・ヤンキースに移籍して以来、ほぼ10年にわたって松井秀喜さんの取材をしてきた。
移籍1年目に本拠地ヤンキースタジアムでのデビュー戦で放った満塁本塁打や、その年の宿敵、ボストン・レッドソックスとのリーグ・チャンピオンシップ・シリーズ第7戦で、激闘の8回に同点のホームに滑り込んで大きく飛び上がり、珍しく全身で喜びを表現した姿など、強烈に印象に残る場面は一杯ある。
ただ、そうした華々しい姿と同時に決して忘れることができないのが、2012年の松井さんである。