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戦力外通告の筒香嘉智、「マイナーを選択」はプラスに働く? 天才肌ではない男の“牛歩”と37歳の松井秀喜が語っていたこと
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byJIJI PRESS
posted2021/05/14 17:01
レイズから事実上の戦力外通告を受けた筒香。他のチームから声がかからなければ、マイナーか日本かを選択することになる
3Aでの実戦練習前に松井が語ったこととは?
オークランド・アスレチックスからフリーエージェントとなったが、結局、所属球団が決まらないままにキャンプも終了。引退の2文字がチラつく中で、ようやく4月30日に契約に漕ぎ着けたのがタンパベイ・レイズだった。
そうしてレイズのマイナー施設に入り、ドミニカ共和国など中南米からやってきた20歳にも満たないルーキーリーグの若手選手に混じって、約2週間の調整を行なった。ずっとニューヨークの室内練習場で調整をしてきたために、短パンからのぞく足の白さが妙に生々しく記憶に残っている。
そしていよいよ3Aダーラム・ブルズでの実戦練習に入る直前に行ったインタビューで、松井さんがこんなことを言っていたのだ。
「僕はいま、これまでで一番、自分は本当に野球が好きなんだって感じている」
当て所のない中で孤独の練習を続けてきて、10歳以上離れたマイナーの若者たちと汗を流して感じた野球への思いだった。
自分の野球人生の原点を噛み締める
筒香がどんな選択をするのかは分からない。
日本に戻れば、それなりにまた、輝かしい野球人生が待っているかもしれない。それに比べてマイナーでのプレーを選択すれば、これまで経験したことのないような厳しい環境を味わうことになるのかもしれない。
でもマイナーでのプレーを選択したら、あのときに松井さんが感じたような自分の野球人生の原点を、筒香も改めて噛み締めることができるのかもしれない。
再出発として、それも決して悪くはないチャレンジだと思う。