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鹿島とジーコを連想? イニエスタ会見から読み解く「ヨーロッパ移籍ではなく日本残留」を選んだ“2つの理由”
posted2021/05/12 17:03
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph by
AFP PHOTO / VISSEL KOBE
別れを覚悟していたら僥倖に恵まれた──5月11日に発表されたアンドレス・イニエスタとヴィッセル神戸との契約更新に、胸を撫でおろしたサッカーファンは多かっただろう。クラブ側が予告した「重要な会見」とのフレーズは、「契約満了」や「引退」を想像させるものだったからだ。
とにもかくにも、2年契約の更新が発表された。少なくとも2023年シーズンまでは、Jリーグで彼のプレーを見ることができる。
そもそも身体の強さや走力が強みではない。年齢を重ねることによるメリットを、プレーに反映できるタイプだ。世界のトップ・オブ・トップから離れても衰えを感じさせないのは、彼自身が積み重ねた経験をプレーに生かしているからだろう。
ポドルスキは契約満了でトルコへ
イニエスタは昨年末のAFCチャンピオンズリーグで右足大腿部を負傷し、長期の離脱を強いられていた。Jリーグには5月に復帰したばかりだが、ヨーロッパの第一線に戻るという選択肢もあったはずである。
セリエAのユベントスでプレーするクリスティアーノ・ロナウドは、85年2月生まれの36歳だ。イニエスタとともに10年のワールドカップと12年のユーロを勝ち取ったフェルナンド・ジョレンテは、セリエAのウディネーゼと22年6月末までの契約を結んでいる。こちらも36歳だ。スペイン代表当時の僚友では、レアル・マドリーのセルヒオ・ラモス、今シーズンからレアル・ソシエダに在籍するダビド・シルバが、35歳にして価値ある働きを見せている。
ヨーロッパの移籍市場において、35歳を過ぎた選手の優先順位は高くない。それでも、選手寿命が延びている近年は、ベテラン選手の存在が再認識されている。イニエスタが戻りたいとの意思を示せば、獲得に乗り出すクラブはあったに違いない。ヴィッセルとの契約満了後、トルコのクラブへ移籍したルーカス・ポドルスキのようなキャリアデザインは可能だっただろう。
イニエスタが“契約延長”を選んだ理由
ならばなぜ、イニエスタは契約延長を選んだのか。11日の会見でこう語っている。