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鹿島とジーコを連想? イニエスタ会見から読み解く「ヨーロッパ移籍ではなく日本残留」を選んだ“2つの理由”
text by
戸塚啓Kei Totsuka
photograph byAFP PHOTO / VISSEL KOBE
posted2021/05/12 17:03
37歳の誕生日に“重要な会見”に臨んだイニエスタ。発表されたのは、神戸との契約延長だった
日本のスタジアムでは、アウェイチームの選手が一方的に罵られたり、ブーイングのシャワーを浴びたりすることがない。ヨーロッパや南米との大きな違いであり、日本が誇れるサッカー文化だ。イニエスタにとっても新鮮で興味深く、リスペクトできるものに違いない。
契約延長に当たっての交渉では、三木谷浩史会長が「経済的にもかなり歩み寄りをしてくれた」と明かした。「男気延長」と書くメディアもあったが、減額を受け入れてもピッチに立つモチベーションを、イニエスタは見つけることができるのだろう。
ジーコと鹿島アントラーズのように
会見ではヴィッセルで現役を全うし、引退後も「色々な形でこのクラブと関わり続けたい」との希望を明かした。スパイクを脱いだあとについて語るのはまだ早いが、ジーコと鹿島アントラーズのような関係を築くことができれば、どちらにとっても理想的と言えそうだ。名古屋グランパスにとってのドラガン・ストイコビッチや浦和レッズにとってのギド・ブッフバルトのように、レジェンドの帰還としてチームを指揮するケースもあるが、監督はいつかクラブを離れるものだ。「関わり続けたい」というイニエスタの思いは、ジーコのような関わりをイメージさせる。
今シーズンは開幕からケガ治療に専念してきたが、5月1日のサンフレッチェ広島戦で初めてピッチに立った。75分からの出場で戦列復帰を果たすと、続く横浜F・マリノス戦では59分から出場した。プレータイムは確実に伸びている。「このチームをさらに高みへ連れていきたい」との野心が、37歳の胸で静かに燃えている。