Sports Graphic Number MoreBACK NUMBER
「もう1回メジャーで勝ちたくなった」渋野日向子のハワイ休日に潜入!プライベート空間で語った胸の内とは?【全米女子オープン出場】
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byWataru Murakami
posted2021/06/03 06:01
4月の海外遠征で訪れたハワイの青い空と海の前でポーズを決める渋野日向子
「みんな解説したがりだな、他人のことをねえ」
「疲れる疲れないで言えば、疲れます(笑)。ここまで盛り上がる必要があるのかなって自分でもついていけなかったですもん。今も慣れてはいないです。注目されるのは嬉しいし、ありがたいこと。でも、ひとりでいる時間はすごく好きになりました」
昨年はコロナ禍で無観客開催が続き、メディアに取り囲まれることもなくなった。それでも渋野はいつも話題の中心にいる。スイングの変更、コーチとの別離、石川遼からの助言、何かをすればすぐに賛否が渦巻く。頼んでもいないのにデリバリーされてきたピザみたいだ。
渋野はただただ不思議に思う。
「いろんな人が意見を言ってくれるけど、他人のことなんてほっとけばいいのにって(笑)。1から100まで全部説明するつもりはないし、それを理解してほしいとも思わない。そうやって……ね? 面白いなと思って。ホントみんな解説したがりだなって、他人のことをねえ。まあ、そうやって言う……あれ、何の話だっけ?(笑)」
周りの声に腹を立てているわけじゃなく、気に病んでいるのでもない。駅で反対のホームに立っている人を見る気分に近い。自分に干渉はしてこないが、なんとなく視界には入っている、というような。
「松山さんは10年出続けてやっと勝った」
全英で日本女子42年ぶりのメジャータイトルを獲得した後、目標に掲げたのは女子5大メジャー完全制覇だった。しかし昨年、約2カ月に渡って米ツアーに継続参戦したことで現実を思い知った。
「ツアーのレベルが高すぎて自分に足りないものがたくさん見える。見えすぎちゃう」
インタビュー直前のハワイでの大会も、優勝した元世界1位のリディア・コには15打差をつけられた。「あと15打縮めろと言われても今は無理」。5大メジャーなんてなおさら、というのが偽らざる心境だった。
そんな心の灯火となっているのが、ハワイから7000km以上離れたオーガスタで誕生した日本男子初のメジャーチャンピオンの姿だった。
「私とは全然ストーリーが違いますよね。私は初出場で『行ったら勝った!』みたいな感じで、松山さんは10年出続けてやっと勝った。自分もメジャーに勝ったけど、いろんなことを経験したり、苦しんでいた人が勝つのは全然違うなって」
その上で湧き上がる思いを感じている。
「5大メジャーというよりも、もう1回メジャーに勝ちたい。それが目標になりました。これからもっと苦労してメジャーを勝てた時、たぶん全英で勝った時とは全く違う感情になると思うから。そうしたらもっといいことが喋れそう(笑)」
太陽は依然として頭上にあった。どこまでも青く広がる海を眺めながら、渋野が考えていたのはそういうことだった。
記事内で紹介できなかった写真が多数ございます。こちらよりぜひご覧ください。