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「もう1回メジャーで勝ちたくなった」渋野日向子のハワイ休日に潜入!プライベート空間で語った胸の内とは?【全米女子オープン出場】
posted2021/06/03 06:01
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph by
Wataru Murakami
ワイキキのストリートとビーチを見下ろすホテルのバルコニーに腰を下ろして渋野日向子は言った。
「気落ちしていたわけじゃないんです。でも何を目指して頑張っていこうかなとは考えていました。かなり最近まで無理だなと思ってたんです。5大メジャー制覇するって言ったけど、あれ無理だなあって」
頭上の太陽とは対照的に晴れ晴れとしない告白。しかし、その表情を見て言葉ほど湿っぽさがないことに気づくのだった。
最近、渋野あまり笑わなくなったよなぁ。と感じている人がいたら、それはあまり心配しなくてもいいらしい。彼女は悩んでもいなければ、迷ってもいない。じゃあ、なんなのか。「考えている」のだ。
「上位にはいきたいけど、今はスイングのことやゴルフの内容に関して考えることが多いんです。今まで何も考えずにひたすらやっていたから」
と渋野は昔の自分を少し突き放すように言った。
「優勝した('19年の)全英を見たらわかるじゃないですか。何も考えずにただ振っているみたいな。それが良かったのかもしれないし、それだけじゃダメになる時もあると思ってます」
「知りすぎてもダメだと思う。でも」
昨年は周囲が期待するような結果を残せずにいたが、終盤に復調して12月の全米女子オープンでは優勝争いを演じた。今年の開幕直前に掲げた目標は「自分を知ること」。だから今も考えている。
テイクバックを変えた新しいスイングのこと、ウェッジを4本にしたアプローチのこと、コースマネジメント、これからのキャリア、時々はおやつのことも――。それだけあれこれ考えている最中にニコニコできる人間はあまりいない。表情は自然と硬くなる、というか真顔になるだろう。
「知りすぎてもダメだと思う」
ゴルフとは経験や知識が邪魔をするスポーツでもある。
「でも、今のところ怖さまではわからない」
練習場に行っても周りに選手はおらず、その日のメニューやテーマは自分で決める。ひとりでいる時間、考える時間。日本人の姿がほとんどないハワイでそんな1週間を過ごす彼女に、あらためて全英優勝以降のフィーバーについても尋ねてみた。