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池江璃花子の肉体・心理面は何がスゴいのか 元五輪スイマー伊藤華英も「信じられない」と語る泳ぎぶりとは
text by
伊藤華英Hanae Ito
photograph byYUTAKA/AFLO SPORTS
posted2021/04/26 11:00
競泳日本選手権、100mバタフライで優勝して涙と笑顔を見せた池江璃花子
勝ちたい、では勝つために……どういう練習をするのか、どんなレースプランでいくのか? そういった思考ができる選手って、実はなかなかいないと感じていますし、そもそも「勝ちたい」という気持ちを忘れがちになってしまうんですよね。それを呼び起こした彼女の精神面の強さを感じました。
レース1本、1本を無駄にしなかった
池江選手自身、リオデジャネイロ五輪や数多くの世界大会を経験してきました。その中で今回の日本選手権はシビアな戦いになるということを彼女自身も経験の中で理解していたと思います。白血病療養から復帰した昨年8月から、ここに至るまでのレース1本、1本を無駄にしなかったことが最高の結果を呼び込んだのではないでしょうか。
もちろん決勝が勝負だったと思うのですが、予選、準決勝も積み重ねていくうちの1本だったと思います。それぞれのレースで課題を見つけて次につなげる。そして決勝はできる限り完璧に近づこう――そんな意欲の高さを感じました。
自由形の話になりますが……あえてスタートを頑張らないようにして、後半が勝負だというレースプランもありましたよね(※100m自由形準決勝で前半を7番目で折り返したものの、後半に猛追して、54秒36のタイムを出し、全体1位で決勝に進出した)。私もさすがに「大丈夫かな。スタート滑ったのかな」と、心配しちゃったんですけど(笑)。
ただコーチ陣に聞いたところ、「よくやることなんです。調子がいい時は、ああいう風に後半の泳ぎを確かめるためのレースをする」とおっしゃっていました。こういった"実験"ができたのも、バタフライを勝った後ということで、どこかしら心の余裕もあったのでしょうね。レースのたびに自信をつけている――それは泳ぎ、そして彼女の表情を見ていても強く感じるところでした。
なので、観戦しているこちら側も「まずは池江選手が1番になって、他の選手たちはリレーの標準記録を切るためにこのくらいのタイムで……」と勝手に計算していたほどです(笑)。“池江選手がトップになる”という想像が自然にできていること自体、信じられないことなんですが。
4日間で計11本のレースは相当きつかったはず
とはいえ4日間で100mバタフライと自由形、50mバタフライと自由形の4種目を泳ぎ切るのは、相当キツかったはずです。