バレーボールPRESSBACK NUMBER
“お祭り男”涙の引退…「最後だから言いますけど」33歳高松卓矢がバレー界、Vリーグへ望むことを熱弁
posted2021/04/23 17:00
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph by
WOLFDOGS NAGOYA
お祭り男がコートを去る。V.LEAGUE DIVISION1ウルフドッグス名古屋のアウトサイドヒッター、高松卓矢(33歳)が、現役を引退した。
4月18日、WD名古屋のホーム・エントリオで、高松と同級生のセッター内山正平の引退セレモニーが行われた。3月に引退を発表したリベロの古賀幸一郎を含め、前身の豊田合成トレフェルサが2015-16シーズンにリーグ初優勝を果たした時の中心選手3人の引退は、チームの一時代の終わりを感じさせる。
コートに響きわたる甲高い声ももう聞けなくなるというのはなんとも寂しい。“声”は高松の代名詞だった。試合中、周りを鼓舞し続ける高音ボイスは、味方にとっては心強く、相手にとってはわずらわしい武器だった。
その元気印が、引退セレモニーのスピーチの最後、声を詰まらせた。ファンへの感謝の思いを言葉にしようとした時だ。
「本当に今まで、僕に……、元気を与えてくれて、ありがとうございました。僕がここまでやってこられたのは、ファンの皆さんの声援のおかげです。最高のバレー人生でした」
高松の支えになったある言葉
高松が、声を出すことを自分の武器として貫こうと決めたのは大学生の時だった。ユニバーシアード代表でのある練習試合で、劣勢の展開の中、高松が途中から出場し、声を張り上げて盛り上げると、流れが一変し逆転で勝利した。
その試合後、コーチを務めていた小林敦氏(現・東レアローズゼネラルマネージャー)が、選手たちを集めてこんな話をした。
「なんでこの試合に勝ったかわかるか? 高松が雰囲気を変えてくれたからだ。それをみんなもやらないといけない。でもお前たちには無理なんだよ。こいつは天才だから。高松は、雰囲気をよくしてチームを盛り上げる天才なんだ。だからマネはできないかもしれないけど、でもみんなもやろうとしなきゃいけないんだ」
この言葉が、その後の高松の支えになった。
「僕、“天才”なんて言われたことは一回もなかった。だからすごく嬉しくて、今でもハッキリと覚えています。オレはこれの天才だから、もっと極めようと思って、ずっと声を出してやってきました。大人になると、スマートにやるのがカッコイイ、みたいなところもあるかもしれないけど、僕はそうは思わなかった。声出して、盛り上げてやるのが自分らしさ。それを持ち続けられたのは、小林さんが言ってくれたことが、僕の心にずっと残っていたから。心の支えになっていました」