バレーボールPRESSBACK NUMBER
“お祭り男”涙の引退…「最後だから言いますけど」33歳高松卓矢がバレー界、Vリーグへ望むことを熱弁
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byWOLFDOGS NAGOYA
posted2021/04/23 17:00
前身の豊田合成トレフェルサ時代からチームを牽引してきた高松。同級生・内山とともに引退セレモニーを行った
そのムードメーカーの才能に、技術や結果が追いついてきたのは、豊田合成に入団して4年目。クリスティアンソン・アンディッシュ前監督との出会いがきっかけだった。
「豊田合成では自分なりに試行錯誤していたけど、思うような成績を出せず頭打ちになっていた。その頃に、アンディッシュという、僕の人生を変えてくれた最大の恩師と出会って、3つ4つ上のレベルに連れて行ってもらった」
アンディッシュ前監督は、プレーに直結するトレーニングや、技術、戦術、哲学を叩き込んだ。高松はブロックを利用して得点を奪う技術を身につけたり、課題だったサーブレシーブを向上させた。こわもての外国人監督にも臆せずコミュニケーションを取る高松を、アンディッシュも重宝し、高松は不動のレギュラーとなった。
チームも大きく変わった。アンディッシュはチームに多くのコンセプトを植え付け、それが浸透するにつれチームは強くなった。内山は、「こういう場面ではこうする、というものを、みんなが共有できるようになったのが大きい」と語る。
「たかまつり」「まつりさん」
そして15-16シーズンのVリーグで、チーム創設以来初めての優勝を果たした。
高松は、コート内、チーム内だけでなく、外に向けても積極的に発信するようになった。試合後の記者会見ではVリーグやバレー界に対する率直な意見を語り、SNSもフルに活用。ファンからは「たかまつり」「まつりさん」と呼ばれて人気を集めた。オールスターゲームなどでも盛り上げ役を買って出て、イベントに欠かせない存在となった。
2018-19シーズンのVリーグ開幕記者会見でのこと。各チームを代表する選手が集められ、イベント広場のステージでトークショーを行っていたのだが、高松はいきなりマイクを持ってステージを降り、たまたま広場の横を歩いていた通行人に、「お兄さんお兄さん!ちょっといいですか?」と声をかけ、インタビューを始めたのだ。