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“お祭り男”涙の引退…「最後だから言いますけど」33歳高松卓矢がバレー界、Vリーグへ望むことを熱弁
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byWOLFDOGS NAGOYA
posted2021/04/23 17:00
前身の豊田合成トレフェルサ時代からチームを牽引してきた高松。同級生・内山とともに引退セレモニーを行った
「Jリーグ知ってます?」「はい」
「Bリーグ知ってます?」「はい」
「じゃあVリーグはどうですか?」「えー……」
そのやり取りのあと、「そうなんですよ。一般の人にはVリーグは知られてないんです。Vリーグをもっと知ってもらわないと。そこがスタートラインだと思うんですよね」と熱弁をふるった。
大勢の前でこんな行動ができるVリーガーは他にはいない。
2020-21シーズンは、「体が動く間に、自分を育ててくれた大分県に何か貢献したい」と、大分三好ヴァイセアドラーに期限付き移籍した。WD名古屋の世代交代のためにも、という思いがあったが、今季は3年目のアウトサイドヒッター高梨健太が頼もしい活躍を見せた。
「もう、自分の仕事は終わったなと。若い選手たちがこれだけ躍動しているんだから」
引退セレモニーのあと、高松は静かにそう語った。
だが、今後のVリーグやバレーボール界に望むことは? と聞くと、「最後だから言いますけど」と雄弁に語り出した。
「足並みを揃えるべきじゃないか」
「やっぱりVリーグとして、方向性をもっと明確に示したほうがいいですし、足並みを揃えるべきじゃないかと思います。ビジネス化を目指すということで、うちは新しい体育館(エントリオ)を作って、会場内のホスピタリティやエンターテイメント性を高めたりもしています。パイオニアにならないといけないという思いが(WD名古屋の)横井俊広社長にあって、そういうふうに動いていると思うんですけど、一方であまり変わっていないチームもある。まとまりがない感じがします。やっぱり物事を進めていくにあたっては、“目的”と“目標”と“モチベーション”がないと、前に進めないと思うんですよ」
そう言うと高松は、インタビューを行っていた部屋にたまたまあったホワイトボードを使って説明を始めた。
「“目的”というのは、最後に達成したいゴール。最終的にはこうなりたい、というもの。そしてそこに行き着くためのチェックポイントとして作っていくのが“目標”です。いくつものチェックポイントをクリアして、最後に“目的”にたどり着く。“目的”は、大きな、夢みたいなものでいい。Vリーグで言えば、例えば、『バレーボールを、プロ野球やJリーグに並ぶぐらいのメジャースポーツにしたい』というようなものでいいと思うんです。
今、野球やサッカー、Bリーグとも大きな開きがあるけど、それをどうやったら詰めていけるか。そのために短期スパンの目標、プランをいくつも作って、それをクリアしていく。“目標”は細かくて、明確で、イメージしやすいものがいいと思います。
目的地にたどり着くためにもう1つ大事なものが“モチベーション”です。体を車に例えるなら、ガソリンと言ってもいい。何かしら物事を始める時には、この3つが必要です。僕は、オリンピック出場は達成できなかったけど、日本代表になるという夢は達成できた。日の丸をつけるというモチベーションがあったから、細かい目標設定をした上で、ここまでやってこられました。
そういう意味では、今Vリーグは、各チームがどこに向かえばいいのかわからないから、現状維持になってしまっているところもあるんじゃないでしょうか。方向性を明確にして、そこに行くためのプランを練って、なおかつそこに引っ張っていけるような人を作っていくことが必要だと思います」