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ビエルサが笑った! マンチェスター・シティ戦、なぜ“ジャイアントキリング”を起こせたのか【愛弟子が解説】
text by
赤石晋一郎Shinichiro Akaishi
photograph byGetty Images
posted2021/04/18 06:01
ビエルサとグアルディオラという名将対決となったリーズvsマンチェスター・シティ。首位を走るシティが敗れる波乱の結末となった(ビエルサの笑顔の写真は記事中にあります)
その勝利は“驚くべき”ものとイギリスメディアでは語られた
クーパーが退場となりトーレスに同点弾を決められた後、リーズ勝利には999/1というオッズが付けられたほど、その勝利は“ASTONISHING!(=驚くべき!)”ものとイギリスメディアでは語られた。しかし勝利は偶然に起きた結果ではない。ビエルサのチームは常に魅力的なサッカーを追求し、リーズの選手は確固たる信念を持ちプレイを続けた。地道な「プロセス」の積み重ねにより「勝利」という果実を手にしたのだ。エル・ロコのはにかんだような笑顔は、リーズの快挙が彼らの努力の結晶であったことを雄弁に物語っていた――。
(敬称略)
今回の記事をもって当連載は最終回となります。最後に少しだけ企画実現の経緯について記述させて頂くことをお許し願いたい。
まず、この企画及び取材に協力頂いたMRH&CANTERAの代表である辰己直祐氏に御礼を申し上げたい。今回の連載は不思議な縁で繋がっています。解説を担当して頂いた荒川友康氏が日韓W杯でマルセロ・ビエルサと出会い薫陶と受けることになるのと似たように、辰己氏も2002年日韓W杯においてプロトコールオフィサーを務め、FIFA.UEFAのT .S .G.(※テクニカルスタディーグループ)として来日していたイビチャ・オシムと出会います。この運命が、後に前編でも触れさせてもらったオシムのジェフ市原・千葉監督招聘に繋がるのです。
元ジェフの強化担当だった辰己氏自身も、佐藤勇人、寿人兄弟をはじめ茶野隆行、村井慎二、山岸智、工藤浩平、水本裕貴など数多くの日本代表を見出した慧眼を持つ人物です。マルセロ・ビエルサの連載を始めるにあたっても、辰己氏には荒川氏との接点を作って頂き、戦術分析の記述においても多くアドバイスを頂くなど惜しみない協力を頂いた。改めて感謝を伝えさせて頂きたいと思います。
荒川氏にも改めて感謝の言葉を述べさせて頂きたい。ビエルサ戦術の多くは“門外不出”とされており、その一端を明かしてもらうためにはビエルサ本人の許可が必要でした。荒川氏の尽力により、ビエルサの許可を得て本連載は無事スタートすることができました。私の筆力不足により、あまりに膨大で複雑な戦術の一端しか本連載では紹介することが出来ませんでしたが、それでも驚くようなメソッドの数々ばかりでした。
最後にご愛読頂いた「Number Web」読者の方々にも深く御礼を申し上げたい。ビエルサ監督の魅力と戦術の一端を多くの方に伝えたいという、当初の目的はそれなりに達成できたのではないかと自負しています。読者の方々から多くの励ましの言葉や、感想を頂戴できたことは連載の活力となりました。ありがとうございました。
次節以降、リーズの対戦相手はリバプール、マンチェスター・ユナイテッドと強豪との試合が続きます。はたしてプレミアリーグ最終節までにエル・ロコのチームはどのような進化を見せ、どこまで順位を上げることが出来るのか。今後は1人のサッカーファンとして、見逃せない試合の数々を追っていくつもりです。そして当連載については取材を追加し書籍化を目指していく予定です。またいつか、どこかでお会いできる日まで――。
【取材協力】株式会社 MRH&CANTERA
〈参考文献〉
『ビエルサの狂気』(ベースボール・マガジン社)
『leedsunited.com』、『Leeds Live』、『GOAL.COM』、『OLE.COM.AR』他
荒川友康(あらかわ・ゆうこう)
サッカー指導者。アルゼンチンで複数のチームや滝川第二高校での指導を経て、ジェフ千葉・育成コーチ、京都サンガ・トップチームコーチ、FC町田ゼルビアトップチームコーチなどを歴任。ビエルサのみならず、Jリーグでもアルディレスなどの名将の元で働く。アルゼンチンサッカー協会認定のS級ライセンスを所持。FCトレーロス所属。