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【中山GJ】“気持ちが途切れた”オジュウチョウサンは6連覇で復権なるか 「仕上がりに関しては言うことはない」 

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島田明宏

島田明宏Akihiro Shimada

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posted2021/04/16 11:00

【中山GJ】“気持ちが途切れた”オジュウチョウサンは6連覇で復権なるか 「仕上がりに関しては言うことはない」<Number Web> photograph by Photostud

昨年11月の京都ジャンプステークスでのオジュウチョウサン。中山グランドジャンプに復権を懸ける

障害界で頂点をきわめ、平地との「二刀流」を目指した

 本稿の冒頭に「『障害界の絶対王者』と呼ばれた」と記さなければならなかったのは悲しくもあり、残念でもあり、オジュウファンのひとりとしては悔しくもあるのだが、しかし負けたことがニュースになるのだから、今も「王者」であることは間違いない。

 今回、中山グランドジャンプを勝って、自身が持つJRA同一重賞連覇記録を「6」に伸ばせば、「王者」の前についていた「絶対」という冠を取り戻すことができる。

 オジュウチョウサンは、障害界で頂点をきわめたのち、平地との「二刀流」でのタイトル獲得を目指し、昨年からまた障害に専念した。初めて障害レースに出たのは3歳だった2014年の秋。2016年から3年連続最優秀障害馬となり、2018年の初夏から平地への再チャレンジを始めた。武豊の手綱で福島の開成山特別、東京の南武特別を連勝し、有馬記念では4コーナーで見せ場をつくり、武に「感動した」と言わしめるコンマ8秒差の9着になった。翌2019年も障害と平地との二刀流をつづけたが、平地での3勝目を挙げることはできなかった。

 それでも、昨年の阪神スプリングジャンプと中山グランドジャンプを圧勝し、健在ぶりを誇示した。

 障害と平地の両方で上を目指すという、異なる負荷をかけながらこれだけの結果を出してきたのだから、その価値の高さは言わずもがなだろう。

「普通はあり得ないけど、視界に馬の後ろ脚が入ってくる」

 主戦騎手の石神は、この馬が自分以外の騎手を背に平地競走に臨むときも、ずっと仕上げに携わってきた。

 オジュウチョウサンについて話すときの石神は、実に楽しそうだ。

「普通はあり得ないんですけど、障害を越えるとき、ぼくの視界に馬の後ろ脚が入ってくるんです。それだけ深く後ろ脚を折り込んでいるのでしょうね」

 以前、彼は「天性のジャンパー」とも言われたオジュウチョウサンの飛越について、こう説明してくれた。それだけでオジュウの体の柔らかさと、特別な強さがわかる。

 そう、名馬は騎手を雄弁にするのだ。

【次ページ】 「障害を舐めて跳んでいるんじゃないか」

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