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ついに坊主撤廃・スマホ解禁…それでも名門・国見が継承する伝統とは 【大久保嘉人は何と言った?】
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byTakahito Ando
posted2021/04/15 11:03
長崎・国見高校を率いる木藤健太監督。14年ぶりに九州新人大会で優勝するなど、目に見える成果も手にしている
小嶺監督が離れた国見は、低迷期の中にいた。かつては21年連続出場という記録を樹立した選手権には10年間、インターハイも2010年大会以来、出場することができなくなっていた。
「もう国見は、昔のようにトップの選手が集まる場所ではない。だからこそ来てくれた選手をきっちりと育てる。大事なのは、人としての中身。情熱、やる気、実直さ。これこそが小嶺先生が植え付けた本物の国見のメンタリティーで、そこに坊主や携帯電話を持つ、持たないは関係ないと思ったんです」(木藤監督)
坊主の文化が悪いと言っているわけではない。それぞれの意思で行っているのであれば、それは意味があることなのだろう。何事も強制しては、自主性が育たない。大事なのは一つ一つの行動に目的意識を持つことだ。
「たまに『選手を甘やかしている』と言われますが、それは違って、その規則で満足している方が甘やかしている気がします。そもそも我々は結果を出すために坊主をなくしたわけではありません。あくまで僕の中ではフラットな状態に戻ったにすぎないので、本当にこれからだと思います。これから我々の真価が問われてくると思います」(木藤監督)
主将GK緒方(17歳)の言葉
当初は1つのことに打ち込む覚悟の象徴であった坊主が、いつの間にか形骸化してしまっていたことは高校生のリアルな言葉がよく現している。今季キャプテンを務め、U-18日本代表候補でもあるGK緒方要(17歳)はこう語る。
「正直、丸刈りの意味は僕らの中でもよく分かっていませんでした。ただ、『国見はこうだから』という固定観念でやっていた」
長崎市出身の緒方が国見を選んだ理由は「GKコーチがいて、サッカーをする環境が素晴らしかったから」。坊主、携帯電話禁止のルールは「仕方がないという思いで入った」という。
選手たちが受け継がなければいけないのは、小嶺監督が植え付けた勝者のメンタリティーであり、戦う姿勢である。時代へリンクするために、木藤監督は変革に乗り出したのだった。