令和の野球探訪BACK NUMBER

【2021年ドラフト隠し玉】イジメ、怪我、失恋…“逆境に強い”横浜市大サイドスロー右腕「プロに“なりたい”じゃなくて“なります”」 

text by

高木遊

高木遊Yu Takagi

PROFILE

photograph byYu Takagi

posted2021/04/12 17:00

【2021年ドラフト隠し玉】イジメ、怪我、失恋…“逆境に強い”横浜市大サイドスロー右腕「プロに“なりたい”じゃなくて“なります”」<Number Web> photograph by Yu Takagi

逆境をバネに成長し続ける遠江颯太。リーグでフル活躍するタフさと多彩な変化球が魅力だ

 そんな成長を加速する遠江に、アドバイスを送ったある人物がいる。

 横浜商科大の監督を35年にわたって務め、岩貞祐太(阪神)らを育てた佐々木正雄氏(昨年度から神奈川大学野球連盟理事長)だ。実は横浜市立大の臼杵大輔監督は連盟内で常務理事としても活躍しており、一昨年夏は佐々木氏が団長、臼杵監督がマネージャーを務める神奈川大学野球連盟選抜がオランダで行われた国際大会に出場している。

 その縁で帰国後に横浜市立大の練習を視察した佐々木氏は、遠江を見て「良いピッチャーだから伸びるよ!」と激励した。

 さらに続けて「遠投をしたらどうだ?」と助言。それまで意識的にはほとんどしていなかったが、いざ遠投をし始めると効果はてきめんだった。

「体全体を使って軽く投げているうちに(サイドスローとして大事な)体を大きく使って投げることを思い出しました」と、遠江は適度に脱力したフォームを習得。「土曜、日曜と連投しても疲れないようになりました」と振り返る。

 こうした吸収力も彼の武器のひとつだ。

 このオフには臼杵監督に頼んでトレーナーの北川雄介氏を招聘してもらい、肩甲骨や胸郭の可動域の広げ方や使い方のレクチャーを受けた。北川氏も「なんでも楽しめて、前向きで常に上手くなるために取り組む姿勢が素晴らしいです」と遠江を高く評価する。また、手先の器用さの要因については「上半身(背中)の柔軟性があるので、腕の力で頑張らなくても投げることができます。だからこそ指先を器用に操れています」と分析していた。

彼女にフラれても準グランプリ

  昨秋の活躍がまさにそうだが、こういった逆境をことごとく力にできるのが頼もしい。
 
 中学時代には体が小さくイジメに遭っていた時期もある。それでも体と技術の成長で野球部のエースに上り詰めると、標的になることは一切なくなった。

 進学校の佐賀西高時代は1年秋から二枚看板の1人として登板していたが、最後の1年は接触プレーや打球の直撃で故障し、スポーツ推薦の話も消えた。しかし、一般入試を突破して入学した横浜市立大では、部員数の少なさゆえに1年生から登板し、場数を踏めたことが今の成長につながっている。

 逆境に強いエピソードはまだある。大学2年時には彼女にフラれたことがきっかけで学園祭のミスターコンテストに出場し、準グランプリに輝いた。「“人に見られる”ということは野球に通じます。緊張しなくなりました」と笑う。恋に挫けないタフさもきっちりと兼ね備えているようだ。

【次ページ】 「圧倒的な投手に」プロ入りを宣言

BACK 1 2 3 NEXT
遠江颯太
横浜市立大学

大学野球の前後の記事

ページトップ