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「羽生選手の演技を撮影できたとき、報われる思いがありました」 世界選手権を撮影したフォトグラファーが明かす“国際大会の今”
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byAsami Enomoto
posted2021/04/11 11:02
2021年世界フィギュアで3位になった羽生結弦。非常事態下の国際大会は選手や関係者の力で無事幕を下ろした
「公式練習で選手がマスクしているのが印象的でした」
撮影を終えて30日に帰国。31日から3日間、成田空港近辺のホテルで隔離生活を過ごし、検査を受けて陰性だったことから帰宅。自宅で自主隔離生活を過ごしている。
大会をあらためて振り返ったとき、心に残っているのは演技ばかりではない。感染を避けようと努める選手の姿だった。
「公式練習のとき、羽生選手やネイサン・チェン選手がマスクをしているのが印象的でしたし、選手たちが演技が終わるとマスクをして得点を待つ光景もそう。息が切れて苦しいのにマスクを欠かさない。とても苦しかったと思います」
やがて今シーズンそのものにも思いを馳せる。
「当たり前にできていたことがこんなにもできないのかという1年でしたし、選手それぞれにいろいろな不安を抱えながら過ごしてきたと思います。その中でも努力してきたからあれだけの演技ができる。すごいなと思います。
選手だけでなく世界選手権は運営の方々の力も大きかったです。コロナ感染予防をしながら、いい大会にすることに尽くしてくださったと思います。プレスルームは一人ひとり、ゆったりとスペースがとられていました。消毒液もたくさんありましたし、スタッフの人たちも親切で日本語ができるボランティアの方もいました。みんなが努力を重ねた結果の世界選手権だったと思います」
競技も撮影も存分にできる日が来ることを
シーズンを締めくくる世界国別対抗戦の開幕を控える今、次のシーズンへ向けて、こう語る。
「最後まで検査を乗り越えられるかが課題でしたし、大変ではあったけれど、フィギュアスケートの試合を久しぶりに撮れて楽しかったです。来シーズンは、もう少し撮影できる状況になっていればと思います」
そのときには選手がもっと苦労なく練習し、実戦を重ねられる状況になっているだろう。
またコロナ以前のように撮影に行けて、選手が存分に競技に打ち込める。
そんな環境が戻ってくるのを、心待ちにしている。