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黒人など少数派の権利を守るため? オールスターゲーム開催地を「アトランタから移す」“MLB決断の背景”とは
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/04/07 11:01
今年のオールスターゲームの開催地を、ブレーブスの本拠地であるジョージア州アトランタから他の都市へ移すことが発表された
なぜなら、同州選挙では経済的な余裕がなく、多忙な有権者が投票所に行かなくても投票できる「期日前投票」や「郵便投票」で民主党の票が大きく伸び、それがドナルド・トランプ前大統領や共和党の同州での選挙敗北の原因だと見られているからだ。大統領選挙の結果に対しては、いまだにトランプ前大統領や彼の支持者が「大規模な不正行為があった」と抗議しているという報道がなされているぐらいで、今回の選挙関連法の改正も「不正行為を防ぐため」だというのが共和党の主張である。
実際、ブライアン・ケンプ同州知事(共和党)は「選挙の公平さと安全性を高めるための措置」と説明し、身元確認の厳格化を新しい選挙関連法に取り入れたが、それも公共交通機関が発達している都心部に住んでいるため、運転免許証などの身分証明を持つ人が比較的少ないマイノリティーへの圧力を強めるものだろう。また、人口が密集している都市部の投票所には長い列ができることも多く、新しい法律では投票を奨励するボランティア団体が、投票のために行列を作る人々に水を配布することまで禁止しているという。
ケンプ州知事「MLBの決定はとんでもないことだ」
ケンプ知事は地元アトランタでのオールスターゲームがキャンセルされたことについて、記者会見で「(MLBは)リベラルな活動家を恐れて嘘をついている」と批判。5日には保守系メディアFOX(ワールドシリーズやオールスターゲームを中継している局)に出演して、こう言っている。
「MLBの決定はとんでもないことだ。パンデミックのお陰で誰にとっても難しい時代にオールスターゲーム開催を実現するため、大勢の人々が大なり小なり努力してきたのをすべて無駄にしてしまった。我々は単に公正でアクセスし易く、安全な選挙にするために立ち上がっただけ。そもそもアトランタ・ブレーブスは、MLBの決定を支持していないのに」
開催地移転で何億円単位の経済的損失を被ることになったブレーブスも、MLBに対して「とても失望している」という声明を出している。
「これは我々が決めたことでも推奨でもありません。ファンが私たちの街でこのイベントを見ることができないのは悲しいことです。ブレーブスは平等な投票機会の重要性を強調し、この出来事を契機に我々の市でその議論が活発化することを望んでいました。我々は常に分断された時代における団結者として知られており、我々のコミュニティにとって重要な問題に対処するための機会を失いました。残念ながら、この決定により、ジョージア州の企業、従業員、(MLB)ファンが犠牲者となったのです」