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黒人など少数派の権利を守るため? オールスターゲーム開催地を「アトランタから移す」“MLB決断の背景”とは
posted2021/04/07 11:01
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph by
Getty Images
メジャーリーグ(MLB)のロブ・マンフレッド・コミッショナーは開幕の翌日(4月2日)、今年のオールスターゲーム(とその祭典の一つとして行われる予定だったドラフト会議など)の開催地を、ブレーブスの本拠地であるジョージア州アトランタから他の都市へ移すことを発表した(後にコロラド州デンバーに決定した)。
3月25日に同州で成立した選挙関連法の改正に「反対抗議」するための迅速な対応だったが、すでにMLB選手会のトニー・クラーク専務理事やジョー・バイデン大統領もその動きを支持している。数年前の保守的なMLBでは考えられない英断だ。
この動きに、有料の米動画配信サービス「Hulu」で公開中の「Soul of a Nation」を思い出した。Black Lives Matterの「その後」についてフォーカスしたドキュメンタリーで、第5話の冒頭では人種とスポーツについてこう語られている。
「我々は彼らの運動能力に畏敬の念を抱いています。(バスケットボールで)残り数秒のショットを決めたり、(アメリカンフットボールで)試合に勝つキャッチをする選手たちをヒーローと呼び、その才能を崇拝しています。
ところが、(人種差別への反対で)彼らが立ち上がると、彼らは追放され、非難されてきました。黙って走れ。黙ってプレーしろ。黙ってタッチダウンして得点しろ。黙ってドリブルしろ。黙るんだ、と。
しかし、彼らは再び、『声』を見つけたのです。黒人の命が懸念される限り、この世代のアスリートは(彼ら自身が)問題であり続けることにしたのです」
最後の「問題である=To be a problem」という部分は、昨年亡くなられたジョン・ルイス下院議員が生前、自ら「良き問題になる」ことで人種差別の解決を目指す、と語っていたことへのオマージュだが、MLBが開幕直後に下した決断は、まさにそのものだった。
決断の背景にある「ジョージア州の選挙関連法の改正」
ジョージア州の選挙関連法の改正は、とても簡単に書いてしまうと「黒人などの少数派の投票を阻害する可能性がある新しい投票法」であり、元々は共和党の地盤だった同州が昨秋の大統領選で民主党に敗れ、今年1月に行われた上院議員選出(2議席)の決選投票でも民主党候補に連敗したことを受けての、共和党の対抗策だと言われている。