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黒人など少数派の権利を守るため? オールスターゲーム開催地を「アトランタから移す」“MLB決断の背景”とは
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/04/07 11:01
今年のオールスターゲームの開催地を、ブレーブスの本拠地であるジョージア州アトランタから他の都市へ移すことが発表された
つまり、悪いのはマイノリティーの投票率の妨げとなる新法や、それを決定したジョージア州ではなく、「悪いのはMLBだ」という声明である。
考えてみれば、ブレーブスは名物の応援スタイル=「真っ赤なトマホーク・チョップ」を「アメリカ先住民に対する侮辱と感じる人もいる」と一時的に禁止したにもかかわらず、いまだにロゴマークに「真っ赤な斧」を使用し続けているチームだ。米国の反差別サイトで「ブレーブスという名称は『勇敢』という言葉の意味に便乗した差別的な名前だ」などと糾弾されながら、まったくチーム名変更について話題にならないぐらいなので、MLBの決定に異議を申し立てても何ら不思議なことではない。
保守系メディアからは攻撃的な批判も…
時代に逆行する「変化」を望む風潮が残っているのは、ジョージア州だけではない。投票の厳格化は共和党政権の基盤がある北部の州でも議論されているそうで、FOXのニュース番組などでは「ほかの州も見習うべきことではないのか?」などと伝えるコメンテーターが普通にいたりする。
2007年のドラフト1巡目(全体14位)指名で、地元ジョージア州の高校からブレーブスに入団したジェイソン・ヘイワード外野手(現カブス)は、そんな保守派の動きについて、「全員を喜ばせることはできないと思う」と言った。
「アトランタには野球が大好きで、オールスターゲームを楽しみにしていた人たちが大勢いるのは知っています。ミッドサマー・クラシック(著者注:オールスターゲームの意)なんです。そこで育ち、野球をたくさん見てきた人たちがいるので、それは特別なことだと思う。しかし同時に、ここには今もまだ、平等を求めている人々がいるのです」