甲子園の風BACK NUMBER
「力が入らなくて『やばいな』」 センバツNo.1エース畔柳亨丞の異変と“140km超なし+変化球68%”の一部始終
text by
間淳Jun Aida
photograph byKyodo News
posted2021/04/01 06:00
2番手投手としての登板になった畔柳。状態が万全でなかったことを自覚していた
「何とかチームを勝たせたい一心で投げていたが、途中降板してしまい申し訳ない気持ちでいっぱいです。三者連続三振を奪ったときに『いける』と思ったが、ベンチに帰ったときに力が入らなくて『やばいな』と思って、代わってしまいました」
投球フォームにいつもの力感がなかった
畔柳は初戦から、29日の準々決勝までの3試合、中1日で計379球を投じていた。この試合は、明らかにこれまでの姿とは違った。投球フォームにいつもの力感がない。打者を力で制圧する最速149キロのストレートは、1球も140kmを超えなかった。さらに、全31球のうち変化球が21球と約68%を占めた。
それでも中京大中京は、畔柳からバトンを受けた公式戦初登板の大江が3回を無失点に封じた。打線も9回に1点を奪ったが、あと1点届かなかった。チームが目標に掲げていた日本一を果たせず、畔柳は「自分自身が不甲斐ない形でマウンドを降りてしまったので、本当に申し訳ない気持ちです」と責任を背負った。
チームを頂点に導くことはできなかった。とはいえ、今大会ナンバーワン投手である事実は色褪せない。磨いてきた自慢のストレートを武器に、4試合で計27回1/3を投げて1失点。本調子でなくても、変化球で打者を翻弄する能力の高さも見せた。
「甲子園では自分1人で投げ切る思いで、これから練習や投げ込みを多くしていかないといけない。相手がストレートに張ってきた中で、変化球で空振りを取れたのは自信になる。ただ、自分の一番の武器はストレート。そこはしっかりとブラさないでやっていきたい」
「日本一」の目標は夏に。絶対的エースとしての矜持と、ストレートへのこだわりを口にして聖地を去った。
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