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ダルや大谷翔平らに投げ勝ち、西武→ロッテ→楽天で6勝3敗… 涌井秀章の“開幕投手での異常な強さ”を称えたい
text by
広尾晃Kou Hiroo
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/30 06:02
田中や早川らに注目が集まる楽天投手陣だが、昨季パ最多勝、涌井秀章も忘れてはいけない
ダル、大谷らに投げ勝つ一方で斎藤佑樹に……
開幕戦は、どのチームもエースが登板する。涌井秀章は金子千尋、ダルビッシュ有、清水直行、成瀬善久、攝津正、大谷翔平、則本昂大とパ各球団の錚々たるエース級と一騎討ちを演じてきた。その上で6勝3敗は見事の一語だ。
投球内容を見ても、10登板のうち9試合がQS(クオリティ・スタート。先発で6回以上投げて自責点3以下、先発投手の最低限の責任)。QSをクリアできなかったのは2012年だけ。この年は日本ハム斎藤佑樹との投げ合いになったが4回で降板。なお斎藤はこの試合、9回1失点で完投しており、現時点でキャリア唯一の開幕勝利投手となった。
これまでの“開幕投手常連”と成績を比べてみる
<開幕戦先発回数とその成績、※〇は通算勝敗>
・14回
金田正一(1952年~65年 国鉄、巨人)〇400勝298敗
4勝8敗
鈴木啓示(1967年~85年 近鉄)〇317勝238敗
9勝2敗 防御率2.52
・13回
村田兆治(1975年~90年 ロッテ)〇215勝177敗
6勝6敗 防御率3.41
・12回
山田久志(1975年~86年 阪急)〇284勝166敗
8勝2敗 防御率2.36
・10回
東尾修(1975年~87年 太平洋・クラウン・西武)〇251勝247敗
2勝7敗 防御率4.93
涌井秀章(2008年~21年 西武、ロッテ、楽天)〇145勝132敗
6勝3敗 防御率1.84
・9回
北別府学(1982年~94年 広島)〇213勝141敗
6勝2敗 防御率3.16
平松政次(1970年~80年 大洋・横浜大洋)〇201勝196敗
5勝4敗 防御率1.85
石川雅規(2005年~20年 ヤクルト)〇173勝171敗
5勝3敗 防御率3.44
星野伸之(1990年~2000年 オリックス、阪神)〇176勝140敗
2勝5敗 防御率3.72
松岡弘(1971年~81年 ヤクルト)〇191勝190敗
3勝4敗 防御率5.19
※金田正一は自責点が不明な試合があるため、防御率を算出せず。
金田正一、鈴木啓示と両リーグを代表する左腕エースが14回で並んでいるが、金田は4勝8敗と大きく負け越し。下位に沈むことが多かった国鉄は、開幕戦で巨人と当たることが多く、苦戦していた。
対照的に鈴木啓示は長年、絶対的なエースとして君臨し、14登板で9回完投するなど、開幕戦最多の9勝を挙げている。