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「おーい、ハンバーグ!」ジャマイカから来た少年・鈴木武蔵が浴びた痛烈な言葉…“シッカロール”を全身に塗りつけた日々
posted2021/04/01 11:06
text by
鈴木武蔵Musashi Suzuki
photograph by
Getty Images
※本稿は『ムサシと武蔵』(徳間書店)の一部を抜粋、再編集したものです。
1年生の頃は、みんなまだ無邪気で、何も考えずに仲良く遊んでいた。でも、3年生に上がったあたりから、周りの反応が変わっていった。
「みんな、遊ぼうよ!」
ある日、僕がクラスメイトに声をかけると、こう返された。
「あああ、ムサシか。お前、入ってくるなよ」
ショックだった。今まで仲良く遊んでいたはずの友達から、急に冷たい態度をとら
れたからだ。
「何で? 僕、何か悪いことをしたかな」
その日から僕の周りは急に冷たくなった。休み時間も放課後も、僕のそばから人が
いなくなった。
「おーい、ハンバーグ!」
最初は誰のことを言っているのか、わからなかった。
「お前だよ、お・ま・え。ハンバーグみたいな色してるの、お前だけだろ。でも、ハンバーグと言うよりウンコだな!」
キョロキョロしている僕に、言葉はまるで石のように次々と投げつけられた。
「え、僕のこと?」
顔を上げると、僕に指を差している同級生がいた。
「お前、汚いから遊びたくないんだよ」
悲しみよりも、怒りが湧いた。
「ふざけるな!」
僕は思わずそいつに飛びかかった。クラスは騒然とし、僕は先生に止められた。
「両方悪い!」
僕は納得いかなかったが、そう言われてしまい、その場はいったん収まった。そして、その出来事をさかいに、同級生たちとの距離がどんどん遠くなっていくのがわかった。それが僕にとって一番嫌だった。
言葉の投石は、さらにエスカレートしていった。
「お前、ハンバーグよりも大きなフライパンだな」
「うっわ、黒。黒くて黒板かと思ったよ」
心ない言葉の石が、次々に浴びせられた。