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前田健太がメジャー6年目で初「まさか開幕投手になるとは…」 それでも“浮足立たない”のはなぜか?
text by
ナガオ勝司Katsushi Nagao
photograph byGetty Images
posted2021/03/24 17:01
メジャー6年目で初の開幕投手に決まった前田健太
もちろん、開幕投手だろうが、エースだろうが、実績がなければその立場を得ることはない。前田はサイ・ヤング賞の記者投票で2位になった昨年の成績によって、ツインズから全幅の信頼を得たわけで、その高評価具合は、彼がツインズの「メディア・ガイド(全選手、全関係者の成績や経歴が全て書かれたメディアやファン向けの本)」の表紙になったことでもよく分かる。
ただし、「マエケンチャンネル」でもオンライン会見でも、開幕投手について語る前田には浮足立ったところが全く見られなかった。むしろ「スタート地点」として見据える、チームを引っ張る投手の気構えが感じられたのだ。
目標はワールドシリーズ「とにかく1つ勝てば、流れは変わる」
「ツインズはプレーオフに勝ててない。皆がその考えを持ってしまっているから、そのことを一回忘れないといけない。とにかく1つ勝てば、流れは変わると思う。(昨季は)シーズン中とプレーオフの野球が変わってしまっていたので、ツインズらしい勢いのやる野球ができれば絶対に勝っていけるはず」
前田がオンライン会見でそう言ったのは、キャンプインして間もなくの頃だった。ツインズにとって地区優勝やプレーオフ進出はもはや目標ではなく、通過点である。慢心ではなく、アメリカンリーグ(AL)中地区3連覇を狙うツインズだからこそ、目指さなければいけない目標なのだ。それはロコ・バルデリ監督の言葉からも簡単に読み取れる。
「選手たちに言ったのは、『周りを見てくれ。ここには我々の目標を達成するために必要なピースがすべて揃っている』ってことだった。あとは我々自身がやるだけなんだ」
バルデリ監督はその日、「大きな声で言うのは今日が唯一の日だけど」と言いながら「ワールドシリーズだ」と目標を口にした。
今オフは「メジャー屈指」と評される守備のアンドレルトン・シモンズ遊撃手や、前ヤンキースの左腕J.A.ハップ投手などを補強したが、それは「ワールドシリーズ」が現実的な目標であり、今の彼らの立ち位置でもあるからだ。プレーオフ18連敗という不名誉な記録を持つツインズについて、「どうせ負けるんだろ?」と悪態をつくSNSのメッセージを目にしたことはあるが、同時に「(プレーオフで)1つ勝てば悪い流れも断ち切れる」と思っている人は多いだろう。
前田がクリアしなければいけない「2つのこと」
では、その悪い流れを断ち切るにはどうすれば良いのか。昨季から残っている選手ができることは、そんなに多くない。