2000年ドラフト1位で横浜ベイスターズに指名された内川は、高校時代から強打の右打者として知られていた。決して足が速いわけでも、守備が抜群に上手いわけでもない。ただ、バッティングに関してだけは高校時代から「自信があった」と本人も語る。

高校時代の内川©JIJI PRESS

　しかし、プロの壁は思いのほか厚かった。

　1年目から一軍で出場機会を与えられたが、なかなかレギュラーを掴み取る事ができない。毎年のように期待され、一軍でもそれなりの結果を残すことはできたが、本人いわく「完全に認められるまではいかない、くすぶった状況」が実に7年間も続いた。

杉村コーチに「お前、バカか」と言われた打撃感覚

　そんな時に出会ったのが、2008年にベイスターズの二軍・湘南シーレックス育成総合コーチに就任した杉村繁だった。

　前年まで東京ヤクルトスワローズの一軍打撃コーチを務めた杉村は、内川に「どういう感覚でバッティングをしているのか」を問うた。

「ポイントを前にして、レフト方向を中心に強い打球を打ちたいんです」

　そう答えた内川を、杉村は

「お前、バカか」

　こう一蹴したという。

「ヤクルトでは、お前をそういう形（ポイントを前にさせて打たせる）で打ち取ろうとしている。相手がそういう狙いで攻めてくるのに、お前が自分からそれにハマってどうするんや」

　青天の霹靂だった。

　それまで、自身の打撃スタイルの長所だと信じていたものが、対戦相手からは短所だと思われていたのだ。

「じゃあ、どうすればいいんですか」

　内川の問いに対する杉村の答えはシンプルだった。

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