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「お前、バカか」から安打製造機へ… 内川聖一の“特異な技術”を支える恩師・杉村コーチの教え、そして再会
posted2021/03/26 11:05
text by
花田雪Kiyomu Hanada
photograph by
Naoya Sanuki
NPB歴代17位の通算打率.3031(2020年終了時点)、右打者史上最長タイの7年連続打率3割(2008~2014年)、シーズン右打者最高打率.378(2008年)、NPB史上、二人しか達成していないセ・パ両リーグ首位打者(2008、2011年)――。
残してきた記録を挙げればキリがない。
今季から東京ヤクルトスワローズでプレーする内川聖一がNPB史上に残るヒットメーカーであることに、異論を挟む者などいないだろう。
その打撃技術、理論は同業者のプロからも一目置かれている。
接点が多くなかった森本稀哲ですら「一番の衝撃」
以前、現役を引退した直後の森本稀哲氏が、こんな話をしてくれたことがある。
「プロ野球人生の中で、いろいろな人とバッティングの話をしましたが、一番衝撃を受けたのが内川選手でした。本当にバッティングの事を深く、細部まで考えている。年下ですけど『そんなことまで考えて打っているのか』『やはり、プロでも結果を残す選手の思考は違うな』と感じた事を憶えています」
森本と内川は、現役時代にチームメイトになったことはない。決して接点が多かったわけではなく、森本自身も「そこまでたくさん話したわけではない」と語る。
それでも、わずかな時間で「思考が違う」と思わせる何かを、内川は持っていた。
2020年オフ、その内川本人から、自身の打撃技術や理論について聞く機会に恵まれた。そこで感じたのは、技術力の高さはもちろん、理論理屈に対してのアプローチの方法と考え方の多様さだった。
「自分の中で打撃について細かく考えるようになったのは、2008年から。初めて首位打者を獲った年ですね」