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伝説の阪神大賞典「ナリタブライアンvsマヤノトップガン」から25年 武豊が当時語っていた“想定外”とは
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shimbun
posted2021/03/21 11:03
25年前の阪神大賞典で激しく叩き合い、3着以下を置き去りにする名勝負を繰り広げたナリタブライアン(手前)とマヤノトップガン
「天才」VS「元祖天才」のゲートが開く
ゲートが開いた。メンバー中最も速いスタートを切ったのは2枠2番のナリタブライアンだった。体半分ほど抜け出しかけたが、内と外の馬を先に行かせて控えた。
8枠10番から出たマヤノトップガンもポンとゲートを出た。そのまま先行する。
河内洋のスティールキャストがハナに立った。ブライアンとトップガンは、内外離れて3、4番手あたりを追走する格好になった。
1周目の3コーナーを回りながら2頭は少しずつポジションを下げた。トップガンは4番手の外目、直後にブライアンがつけて4コーナーを回り、正面スタンド前へ。
最初の1000m通過は1分3秒0。ゆったりとした流れのなか、トップガンはやや行きたがっているようにも見える手応えだ。田原が長手綱でなだめている。ブライアンもその後ろで折り合っている。
1、2コーナーを回り、向正面に入ったときにはトップガンは完全に折り合っていた。ブライアンはそれをマークするように直後にいる。
2000m通過は2分7秒1。相変わらずペースは遅い。
3コーナーでトップガンが進出するとスタンドが沸いた。田原の手はほとんど動いていないのに、ラスト800m手前で外から楽に先頭に立ち、後続を突き放しにかかる。
有馬記念同様、トップガンによるワンサイドゲームになるかと思われたが、すかさずブライアンも加速し、トップガンとの差を詰め、外から並びかけて行く。
そのまま4コーナーに入り、ラスト600m地点から、内のトップガンと外のブライアンによる併せ馬の形になった。両馬とも持ったままで後ろとの差をひろげて行く。
歓声のボルテージが高まる。
3番手を置き去りに、びっしり馬体を併せる2頭
2頭とも余裕のある手応えで4コーナーを回る。馬体を併せたままラスト400mを切り、直線へ。
完歩を繰り出すごとに2頭だけが別次元の加速を見せ、3番手のノーザンポラリスを2馬身、3馬身と置き去りにして行く。
ラスト200m。びっしり馬体を併せるブライアンとトップガンは、後ろを5馬身ほど離して叩き合う。
外のブライアンに乗った武が左ステッキを入れた。ブライアンがやや前に出た。
鞭を入れるタイミングを遅らせていたトップガンの田原も左ステッキを入れる。今度はトップガンが盛り返した。ラスト50mほどのところで、トップガンが頭差ほど前に出た。
名手の意地がぶつかり合う。両馬ともに譲らない。
武が鞭を右に持ち替えて追いつづける。その叱咤に応えた武のブライアンが力を振り絞り、大きなストライドで差し返す。
内のトップガンと外のブライアンが並んだままゴールを駆け抜けた。
スタンドが絶叫で揺れた。