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【センバツ】「練習中に大腿骨が折れて…」部員5人だった“離島の弱小校” 2年半で初の甲子園に導いたスゴい練習
text by
中村計Kei Nakamura
photograph byKYODO
posted2021/03/18 18:22
今年の新年初練習 。冬の厳しいトレーニングに励む大崎高校の選手たち
清水 この地から全国で勝負しようと思ったら、2回ぐらい自分の中のリミッターを壊さないとダメ。変身させなきゃならない。清峰時代は、試合でどんなに劣勢に立たされても、選手だちは「絶対、負けるはずがない」と思っていました。それは、そこまでやったという絶対的な自信があったからだと思うんです。
「練習中に1人が大腿骨を折ってしまった」
――ということは、今のチームの最上級生は、一昨年の夏のあとに一度リミッターを外され、去年は去年で再びリミッターを壊されたわけですね。
清水 そのつもりでした。ただ、冬の練習に入ったばかりのタイミングで、丸太を持って走らせていたら、主力の1人が大腿骨を折ってしまって……。普通、走っている最中に折れるようなところではないんですよ。次いで、もう1人の主力が腰を痛めた。あれで気勢を削がれてしまった。選抜がなければ、そんなに気にしないでやっていたと思いますが、これ以上、故障者がでると試合にならなくなってしまうので。なので、普通の高校よりはやっていると思いますが、僕が思っていたところまではできませんでしたね。清峰時代と同じくらいやってやろうと思っていたのですが。
――走っている最中に大腿骨が折れるとは、壮絶ですね……。1週間の練習スケジュールは、だいたいどのような感じなのでしょうか。
清水 平日のうち3日は4時から、残りの2日は5時から練習ができます。練習終わりは、整備まで入れると、8時ちょっと前くらいですかね。なので、長くても4時間未満。朝練は寮で簡単なトレーニングをする程度です。短いですが、僕は基本的に自主練とかはやる必要はないと言っています。それよりも、全体練習の中で出し切れ、と。
――意外と短いんですね。厳しいと聞くと、朝から晩までやったりすることもあるのかと思っていました。
清水 僕は合宿とかもやらないんです。あんまり効率がいいとは思えないので。
「勝てる監督」とは?
――ここまで聞いただけだと、そんなにうまくいくものかなと思います。2019年秋の九州大会こそ初戦で敗退したものの、20年夏、コロナの影響で甲子園が中止になったときは、長崎の独自大会で優勝。続く秋は長崎、九州大会と続けて優勝しています。結果だけ見ると、順調過ぎて怖いくらいです。この監督に誤算というものはないのかなと思ってしまいます。