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「手錠を掛けられた時は頭が真っ白」宮崎大輔39歳が語る“引退危機”と“今の目標”「東京五輪を諦めたわけではないですが…」 

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奥村佑史(テレビ東京)

奥村佑史(テレビ東京)Yuji Okumura

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/03/17 17:03

「手錠を掛けられた時は頭が真っ白」宮崎大輔39歳が語る“引退危機”と“今の目標”「東京五輪を諦めたわけではないですが…」<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

今年6月には40歳となる宮崎。昨年6月の右肩の手術から、11月に逮捕、そして12月には新型コロナウイルスの感染と、39歳は激動の1年となった

何度も「引退」の二文字がよぎった

 だが、一度逮捕された自分をやすやすと受け入れてくれるわけもなく話は進まなかった。ネットには誹謗中傷が溢れ、それを見るたびにポジティブ思考だった自分が嘘のように塞ぎ込んでいった。

「もうダメかもしれない……」

 何度も「引退」の二文字がよぎった。

 そんな時、自宅で1枚のDVDを見つける。ケースに「JAPAN」と記されたそのディスクには2008年北京五輪を目指していた日本代表の記録映像が収められていた。

 そこに映っていたのは日の丸を背負い必死に戦っていた若かりし自分と、苦楽を共にした仲間たちの姿。お世話になってきた人たちの顔が脳裏に浮かぶ。不甲斐なさと悔しさで涙が溢れた。

 地元大分の友人や、かつての代表メンバーたちからは、今も「大丈夫か?」と連絡を受ける。1社だけ残ったスポンサーも「諦めずに頑張ってくれ」と背中を押してくれた。

日本代表は予選ラウンドを24年ぶりに突破

 そうした周囲の声に「こんな状態になっても応援や心配をしてくれる人がいる。そういう人たちにも、ハンドボールで頑張っているところを見せて恩返しをしたい」と少しずつ前向きな気持ちを取り戻した。 

 今年1月に開幕したハンドボール世界選手権も、宮崎の心を動かした。日本代表は予選ラウンドを24年ぶりに突破し、ニュースをにぎわせた。後輩たちの活躍を自宅で見ていた。

「代表は確実に強くなっている。俺ももっと頑張らないと」。いてもたってもいられず家を飛び出し、ランニングに出た。走りながらふと、自分の気持ちに再び火がついている事に気付いた。

チームで試合登録できる選手の上限は16名と限られた枠

「ここで終わりたくない。最後の足掻きかもしれないけど、挑戦しよう」

【次ページ】 「“東京五輪を目指します“と言えるレベルではない」

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