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ホークススカウト「今のボールなら“支配下”でしょ」 ソフトバンク“育成の星”候補、左ピッチャー大関友久とは何者か?
text by
安倍昌彦Masahiko Abe
photograph byKYODO
posted2021/03/17 11:03
3月3日、中日とのオープン戦に登板し1回無失点だった大関友久
あいにくの雨で、室内練習場でのピッチング。その年の秋、繰り上げ1位が2球団重複して阪神タイガースが抽選で引き当てた東北学生球界No.1の剛球を40球ほど受けたすぐ後だった。
汗びっしょりのユニフォームを着替えていると、クリクリした目の選手が前に現れた。
「この次来た時は、自分のボールを受けてください! あっ、自分、大関といいます。高校ですか? 土浦湖北です」
ここにいたのかぁ……。高校時代から見てるよって話をしたら、クリクリの目がキラキラになって、
「それじゃ、ぜひお願いします!」
こちらこそ……4年生になったら、森本(吉謙)監督に僕のほうからお願いしてみます。
「ありがとうございます!」
自分の将来を信じている選手だと思った。これから伸びていく人のみずみずしさが弾けていて、ちょっとうらやましかった。
10日前の「育成2位」指名
大関投手のピッチングを受ける機会がないまま、4年生の秋になっていた。明治神宮大会の「東北代表」を決める大会は、仙台市民球場。この秋のリーグ戦、仙台大は宿敵・東北福祉大学に勝ち点を奪われ、惜しくも2位に甘んじていた。
1回戦は、仙台大のコールドスコアで進んでいた。そのブルペンをのぞいたら、マウンドに大関投手がいる。
立ち投げの指のかかりがすばらしかった。捕球点でミットが止めきれないほどの「破壊力」。捕手の後ろから、両手で大きく“丸”を作って見せたら、気がついたようでマウンドの上でニッコリ笑った笑顔が輝いて見えた。
輝いているはずだ……その10日ほど前、彼はソフトバンクから「育成2位」で指名されていた。
立ち投げから捕手がしゃがんで構えた最初の1球が、右打者の足元に突き刺さるようなクロスファイアーで驚いた。よくある「真っスラ」(スライダー系の変化をするストレートボール)じゃない。きれいなバックスピンがかかって、打者のバットをバッキリ粉砕できる本物のクロスファイアーだ。
担当スカウト「今のボールなら支配下の上位でしょ」
気持ちよさそうに投げている。以前みたいな、体を二つ折りにして、ボールを無理やり上から押さえ込むようなフォームじゃない。スライダーが真っすぐの軌道で来て、ホームベースの手前あたりでグイッと曲がり、これもベースの三塁側にきまって、もっと驚いた。