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指導者にならないJリーガーは何をする? 徳永悠平が麦わら帽と長靴姿でスイートコーンを栽培するワケ
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph byYuhei Tokunaga
posted2021/03/17 11:01
昨季限りで現役引退した徳永悠平。現在は家業を手伝う傍ら、土日は「TOKUファーム」で農業にチャレンジしている
「島原の名産をアピールしたい」
2018年、15年間在籍していたFC東京からV・ファーレン長崎の移籍をきっかけに、地方創生への思いが年々膨らんだ。地元に戻って気づいた長崎の素晴らしさ。故郷を盛り上げたい、魅力を発信したい。その力になれればと考えまず注目したのが、以前から興味を持っていた農業だったという。
徳永さんが暮らす長崎県雲仙市は、島原半島の北西部に位置し、雲仙普賢岳を中心にその裾野には農地や住宅地が広がっている。火山性の豊富な栄養を持つ土壌に恵まれ、温暖な気候のため農業が盛んで白ねぎやいちごは長崎県でも有数の産地として知られている。
「島原半島には本当にいろいろな名産があるんですよ。それをなんとか全国にアピールしたいし、後々、事業としても展開させられたらと思っています。とりあえず、農業のことを何もしらないので、まずは自分が農業を知るところから始めないといけないと思い、農家の友人の力を借りながら始めることにしました」
平日は家業があるため、今は休日の土日を農業の時間にあてている。知人から借りた畑を『TOKUファーム』と名付け、自らトラクターを運転して畑を耕す。うねを覆うマルチシートを敷いたり、種を植えたりして、農作業を一通り経験しているところだ。
スイートコーン栽培、いちご廃棄問題
先月には友人のアドバイスをもとに、まずは初心者でも育てやすい『ドルチェドリーム』という品種のスイートコーンの栽培を始めた。6月にははやくも収穫できる予定で、3000本程度が見込めるという。少し先の話だが、そのスイートコーンをどう活用するのか考え、想像を膨らませるのもすごく楽しいと充実の笑みを浮かべる。
また、畑での作業の合間には時間を見つけて、農家の方と積極的にコミュニケーションも図っている。農作業そのものに関する疑問をたずねたり、ときには地元の農家の悩みを聞き、農家が直面する課題とも向き合っている。
「島原はいちご農家が多いんですが、いちごの廃棄が多い問題もあるんです。例えば、そのいちごを使って、ジャムを作れないかなと考えたり。いろいろアイデアが思い浮かんでくるんですよね。長崎にはおいしいものがたくさんあるので、それを全国に広げられるようなことが、今後できればいいなと考えています」
地方創生という観点では、地元の消費者と飲食店をつなげるシステムなども創り上げていければ、と夢は膨らむ。