プレミアリーグの時間BACK NUMBER
まるで“世界一高価な頃のベイル”… 引退説や「賞味期限切れで返品必至」の酷評を吹き飛ばす復活ぶり
text by
山中忍Shinobu Yamanaka
photograph byGetty Images
posted2021/03/08 17:01
レアル・マドリーで不遇をかこったベイルだが、古巣トッテナムでかつての輝きを取り戻しつつある
まるで“4トップ”のような超攻撃性
特にバーンリー戦でチームの全4得点に絡んだインパクトは大きい。
バーンリーは今季開幕から下位に低迷。対戦時点では7勝に止まっていたが、その勝利の中にはリバプール、アーセナル、ウォルバーハンプトン、アストンビラといった白星も含まれる。トッテナムとしては質実剛健なカウンター集団に足下をすくわれる危険もあった一戦で、勝利の立役者となったのがベイルだったのだ。
試合後、モウリーニョは「別の銀河系からやって来たと思わせる出来ではなかったが」と冗談を交えて評価した。確かに、作り出した決定機の数からすれば、得点数2倍の最終スコアも可能だった。
とはいえバーンリー戦でのトッテナムは、慎重な指揮官のチームとしては「異次元」と言っていいほど攻撃的だった。モウリーニョは積極的にゴールへ向かうルーカス・モウラをハリー・ケインの背後に入れ、その左右にソン・フンミンとベイルを置いた。シュート16本中7本を枠内に飛ばしたトッテナムの前線は、4トップも同然に機能していた。
その中で最も際立っていたのがベイルだ。
2列目右サイドで我慢したモウ采配が実った
獲得当初はセンターフォワードやトップ下のオプションと見られたアタッカーを、コンディションの回復を待ちながら「本人も好む適所」の2列目右サイドで使う方針を貫いたモウリーニョの我慢が実ったと言える。
レンタル移籍前の1年半はほとんど出番がなく、加入後も膝の怪我が慢性化していたベイルは、バーンリー戦が復帰したプレミアでの先発3試合目だった。
前回、1月末のブライトン戦(0-1)ではキレも自信も感じさせない61分間に終わった31歳は、フィットネスを巡って指揮官との不仲も指摘されたが、「様子を見ながら徐々に」というモウリーニョの起用スタンスは、メディア向けの表面的な発言ではなかった。
と同時に、外野に何を言われても自ら余計な雑音を立てることなくフィットネス向上に努めたベイルの姿勢も評価に値する。在ロンドン・クラブ番記者陣の見解は、クラブ側も本人サイドも「ハッピー」という線でおおむね一致していたが、その一方では「賞味期限切れのレンタル商品」として今季終了後の「返品」は避けがたいとの見方が強まっていた。