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PAOK香川真司はCL出場権への切り札… “プーチンと仲良しで怪しい会長”体制での不安要素とは
text by
杉山孝Takashi Sugiyama
photograph byGetty Images
posted2021/03/06 11:01
PAOKで充実した表情を浮かべる香川真司
18-19シーズンは無敗優勝、さらにアカデミー強化
前述のピッチ乱入事件が、情熱の炎をさらにあおったのかもしれない。PAOKは翌シーズン、補強に1000万ユーロ超を投じた。その2018-19シーズン、PAOKは34年ぶり3度目のリーグ優勝を達成した。しかも無敗でのトロフィー獲得という、偉業達成だった。
大型補強が呼んだ成功譚に聞こえるが、やはり程度は知れたもの。その1年に投じた移籍金の総額は1150万ユーロ。昨夏にリバプールがオリンピアコスDFコスタス・ツィミカス獲得に支払った、1300万ユーロにも及ばないのだ。
実は、PAOKの投資は他の領域に向いていた。サビディス体制に入ると、アカデミー強化に大きく舵を切ったのだ。
2015年には寮を新設し、翌年にはアカデミー運営予算を200万ユーロへと倍増した。生え抜き重視の決意表明か、2015-16シーズンにはU-20から14人と、前代未聞の大量のトップ昇格を実行している。
U-6から始まるアカデミーの重視は、結果につながり始めた。U-20は国内リーグを3連覇中。タレントも台頭し、今季昇格したクリストス・ツォリスは左サイドのウィンガーとして定位置をつかみ、ここまでリーグ戦6得点6アシスト。昨年10月には、ギリシャ代表デビューも果たしている。
アテネ勢の“3強体制”がギリシャの構図だったが
PAOKの変化は、国内の構図も変えつつある。
ギリシャではオリンピアコス、パナシナイコス、AEKと、首都アテネを本拠地とするクラブがタイトルをほぼ独占してきた。その「ビッグ3」へ対抗し得る存在となってきたのがPAOKで、過去10シーズンでは前述の無敗優勝のほか、2位に5度食い込んでいる。数年前の現地メディアの調査では、人気はすでにAEKを凌駕。ビッグ3への食い込み、あるいはビッグ4への変化と、地殻変動を起こそうとしている。
新時代が始まるのか。日の出の勢いにも見えるPAOKだが、その裏で落とす影も色濃くなる。