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セリエA監督今季6人目のクビ…“1300km自転車男”など 降格阻止を託された男たちの明暗
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/03/05 17:00
3月に解任となったクロトーネのストロッパ監督。今回は今季これまで監督交代に踏み切った5クラブの状況を整理し、その決断の吉凶を占う
さらに、ジェノアはベテランFWパンデフやFWデストロが再生し、ユベントスからレンタル中のMFロベッラといった伸び盛りの才能も輝いている。戦力の不安は少なく、今や残留の見通しは良好と言える。
しかし、慎重派のバッラルディーニ監督はトレードマークのへの字口を崩さない。
「1つひとつ、目の前の試合へ謙虚に臨むだけ。ここまでの好結果は嬉しいが、この先も気を緩めないことだ」
“逆境スペシャリスト”を迎えたトリノ
指揮官交代による復調は、降格圏を脱出した17位トリノにもあてはまる。
開幕からチームを率いていた理想主義者ジャンパオロ監督の解任はやむを得なかった。なにしろ、クリスマス中断前の14節終了時点で白星は1つのみ。当時リーグ最多失点チームの勝ち点はわずか『8』で、トーロ(※トリノの愛称)は最下位のドン底にいた。
そんななか、1月中旬に就任したニコラ監督は、昨季やはり最下位にあったジェノアや4シーズン前の昇格組クロトーネを窮地から救った“逆境スペシャリスト”だ。
奇跡の残留を導いた仰天公約
ニコラ監督はクロトーネ時代、やはり最下位の絶望的状況で選手たちに発奮を促すべく仰天公約をしたことがある。
「もし残留に成功できたら、クロトーネから故郷のトリノまで、イタリア半島を自転車で縦断する!」
南北に隔たる2つの町は約1300kmも離れている上、真夏のオフにわざわざ過酷な挑戦を自らに課すなんて……、と誰もが驚いた。
ところが、選手たちはこの意気に応えた。
直後のインテル戦でまさかの金星をあげると、チームはそのまま勢いづいて奇跡的残留に成功。ニコラは炎天下のオフに公約を決行し、9日間で見事1300キロを踏破したことで“有言実行の男”として大きな称賛を得た。
ニコラは新天地トリノでも、稀代のモチベーターとして選手たちやガッツを尊ぶファンの心をすでにつかんでいる。