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セリエA監督今季6人目のクビ…“1300km自転車男”など 降格阻止を託された男たちの明暗
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/03/05 17:00
3月に解任となったクロトーネのストロッパ監督。今回は今季これまで監督交代に踏み切った5クラブの状況を整理し、その決断の吉凶を占う
コロナ元年。変革を求めたクラブの苦悩
察しのいい読者ならお気づきだと思うが、ここまであげた5チームのうち、フィオレンティーナを除く4者には共通点がある。いずれも今季から新監督を招いていたクラブだ。
つまり、コロナ時代元年の今シーズンに性急な変化を求めたクラブが軒並み指揮官の選択を誤ったということになる。
ユベントスもピルロ新監督を迎えているが、9連覇王者と地方クラブとでは経営目標も方法論も異なるため、別枠と考えるべきだろう。
監督交代にはそれなりに根拠があり、過去3シーズンに途中登板した監督たちが稼いだ1試合平均勝ち点は「1.14」だった。解任された指揮官たちのそれが「0.97」であるので、シーズンを通して計算すれば6ポイントも勝ち点差が出る。
もちろん、残留は監督独りの力だけで成し遂げられるほど甘いものではないし、選手やクラブ、地元を巻き込む強大なエネルギーが必要になるが、それでも「監督を変える」というショック療法の効果は大きい。
明日は我が身。解任オッズNo.1が渡された引導
“今季、最も早く解任される監督は誰か?”
開幕前恒例のオンライン・ベッティングで、指導歴1年目のユベントス指揮官ピルロは、3.75倍の高人気を集めた。
3番人気はジャンパオロ、2番人気にはイアキーニとリベラーニが並び、1.6倍のオッズをつけた1番人気はストロッパだった。
そう考えると、よくぞここまでもったというべきか。クロトーネを率いたストロッパは、カリアリでの初陣に臨んだセンプリーチ新監督に引導を渡された。
“恨むな、明日は我が身なのだ”。
センプリーチ監督は心の中でつぶやいたにちがいない。そして、後任のコズミが火中の栗を拾うのだ。
暦は3月に入って、これから1試合の重みが増す。
残留争いはこれからが本番。この先、いったい何人のクビが飛ぶのだろうか。