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ディープインパクトの弥生賞に武豊は“不安”を感じていた 「このくらいのデキでどの程度通用するのか」 

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平松さとし

平松さとしSatoshi Hiramatsu

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posted2021/03/05 17:01

ディープインパクトの弥生賞に武豊は“不安”を感じていた 「このくらいのデキでどの程度通用するのか」<Number Web> photograph by Satoshi Hiramatsu

弥生賞を制したディープインパクトは同賞の副称にもなったが、今年その産駒は出走しない

「まるで新幹線に追い抜かれたような感じだったね」

 馬の状態が良いとなれば、鞍上に残された仕事は一つ一つ課題をクリアしていく事だけだったと続けた。

「パドック、返し馬、ゲートインを待つ間の輪乗り、ゲートインと、一つ一つ大事にこなし『はい、OK』とその度に確認しながらスタートを迎えました」

 そのような作業はゲートが開いてからも同じだった。スタート、道中、仕掛けどころからゴールまでも、同様の流れの一環としてクリアすると、ディープインパクトは無敗の2冠制覇を達成。ウイニングランを終えた武豊騎手は安堵の表情で左手を挙げ、ファンの声援に応えた。

 ちなみにブレーヴハートでこのダービーに参戦していたアメリカの名手ケント・デザーモはその目を白黒させながら次のように言ったものだ。

「あんな瞬時にかわされたのは過去に記憶がないよ。まるで新幹線に追い抜かれたような感じだったね」

ディープに初めて土がついたのは

 秋には菊花賞(GI)をも制し7戦7勝で無敗の3冠馬となったディープインパクトだが、この馬に初めて土がついたのが、3冠達成直後に出走した有馬記念(GI)。先に抜け出したハーツクライを半馬身捉え切れず2着に敗れたのだが、思えばこのトリッキーな中山のコースは史上最強馬にしても鬼門というか、力を発揮するには落とし穴がある舞台だったのかもしれない。

 皐月賞は勝利したもののスタートで躓きヒヤッとするシーンがあった。後に武豊騎手は「3冠制覇の中で最も危なかったのがあの場面だったかもしれない」と語っている。

 そしてコース脇に残雪が積もる中で行われた弥生賞も、勝ちはしたものの2着のアドマイヤジャパンとの差は僅かにクビ。引退するまでに7つのGIを含む12勝を挙げたディープインパクトは常に2着馬を2馬身以上突き放す勝ちっぷりを見せており、2馬身に満たなかったのは唯一この弥生賞だけだったのだ。もっとも、武豊騎手は当時、次のように語っていた。

「クラシック本番を前に、必ずしも絶好調といえる状態ではありませんでした。正直、このくらいのデキでどの程度通用するのか、今後を占う良いモノサシになるかとも考えていました。それで着差こそ僅かでしたがちゃんと結果を出したのだから、やはり相当の器だと思います」

【次ページ】 2020年はディープ産駒のサトノフラッグが勝ち馬に

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