「周りの人たちは一流の選手ばかりで、常に刺激を受けてきました。やっぱり、名波（浩）さんをはじめ、天才と呼ばれる人、一流選手と言われる人たちは、僕なんかとは全然違いました。とにかく、日々の練習に取り組む熱量がすごいんです。ただただ上へ行きたいという想いや向上心が伝わってくる。リーグ優勝、日本代表だけじゃなくて、海外を視野にしている人も少なくなかった。でも当時の僕は、その一員であることに胡坐をかいているようなところがあったんだと思います。もっといろんなことを吸収できたはずなのに。

　だけど、自分なりに毎日必死に一生懸命やってきたのは事実だし、それしかできなかったのは自分の器というか、自分の問題なんです。そんな僕がここまでこれたのも、学生時代、プロになってからもジュビロ磐田、FC東京、FC岐阜と、いろんな人たちの縁に恵まれからこそだと思っています。本当に感謝しかありません。これから、少しずつでも恩返ししていきたいですね」

史上初の完全優勝を果たした翌年の2003年　©Getty Images

現役時代は「自分から教えたら選手じゃなくなる」

――引退後に指導者になりたいということは考えていたのですか？

「まったく考えていませんでした。年齢を重ねると『アドバイスした若手の変化がうれしい』という選手もいたし、指導者ライセンスの講習へ行くと意識が変わるという話を耳にはしていましたけど……」

――チームメイトにアドバイスをする、教えるということもあったのでは？

「歳をとるごとに教えたくはなるんですけど、それをしたら終わりだと思っていたんです」

――終わり？

「現役時代は“選手は選手であるべき”だと思っていたので、教えることはしないようにしていました。もちろん『勝つためにこうやってほしい』という要求はします。でも、『こうやったらうまくいくよ』みたいなことは、1回も言わなかったですね」

――でも若手時代にジュビロの先輩に教えをこうことはなかったですか？

「中山（雅史）さん、タカさん（高原直泰）からも何かを言ってもらうことはなかったですね。秀さん（鈴木秀人）くらいです。紅白戦で対戦したとき、DFの秀さんが『遼一、今の動き良かったよ』って言ってくれるくらいで。聞けば皆さん丁寧に教えてくれましたけど、『こうすればいいよ』って教えてくれる先輩はいなかった。だから、自分から教えたら選手じゃなくなるくらいに思っていたんです」

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――でも、指導者ライセンスを受講した。

「35歳を過ぎたあたりで、そろそろ引退後の準備をしたほうがいいかなと思って、選択肢を増やす意味でC級ライセンスの講習を受けました」

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