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【今年で40歳】新キャプテン阿部勇樹が誓う浦和への恩返しとオシムへ「いいニュースを届けたい」
posted2021/02/26 11:01
text by
石井宏美Hiromi Ishii
photograph by
Masashi Hara/Getty Images
「みんなが同じ方向を向いて戦えるようにまとめていく役割を任されると思いますが、だからといって“重い”とも捉えていないですね。いろいろ吸収できるものがあるし、そういう監督が来てくれたと思う。だから、今はすごく楽しく、前向きにやらせてもらってます」
今季、2012年から17年までの6年間キャプテンを務めて以来、4年ぶりの大役を任された阿部勇樹は、新たな気持ちで2021シーズンの開幕を心待ちにしている。
「前回、キャプテンを務めたときは年齢的にはまだ中堅くらいだったと思うんですけれども、今はどう考えても上じゃないですか(笑)。今年で40歳になりますが、若い頃に比べれば選手生活の時間も限られているわけで、悔いなく1年を過ごしていきたいという思いも強い。これまでのシーズンも常に挑戦することを心掛けてプレーしてきましたが、今年はまたキャプテンという任務を与えていただいて、本当にチャンスだなと思っているんです」
今季から浦和レッズの監督に就任したリカルド・ロドリゲス氏も「若手の模範。理想的なキャプテン」と太鼓判を押す頼れる存在だ。
しかし、そんなベテランも2003年、ジェフ市原(当時)で、監督に就任したばかりのイビチャ・オシム氏から初めてキャプテンという大役に抜擢されたときは、戸惑いを隠せなかった。
23歳でキャプテン「遠慮というか甘えがあった」
「いや、あの時は(キャプテンが)いやだとかいうよりも、本当に自分でいいの? と疑心暗鬼な感じでしたよね。実際、最初はキャプテンとして何もできていなかったですし。シーズン中にも感じていましたが、まだまだ自分自身に甘いところが本当に多かった」
人前に出ることが苦手でシャイな性格だった23歳の阿部にとって、“キャプテン”は最も苦手な仕事だった。
当時の取材ノートを振り返ってみると、こんな言葉が記されている。
「いつも年上の選手たちとプレーしてきていたので、自分のことだけやればいいという環境に慣れてしまっていた。あとは先輩がやってくれるという考えがプロに入っても抜けなかったんだと思う」
「試合中の指示も間違っているんじゃないかと思うとなかなか言えなかった。年上の人には指示も出せなかったし、遠慮というか甘えがあった」
それでも、キャプテンを務めるようになって、その言動にあきらかに変化がみられるようになった。よりチームを意識したコメントが増え、試合では率先して声を出し、少しでもチームメイトに怠慢さが見えると遠慮せずに怒鳴っていた。
「キャプテンを務めることをきっかけに、よりプレーで引っ張っていかなければいけないという責任感を感じるようになりました。その経験は12年からレッズでキャプテンになったときにも生きていたと思います」