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“中指事件”のコンテ 謝罪とユーモアを忘れず…大一番ダービーは“インテル強し”を知らしめる絶好機
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph byGetty Images
posted2021/02/21 17:03
ユベントスとのコッパ・イタリア準決勝で騒動を起こしたアントニオ・コンテ。しかし、チームは11年ぶりのスクデット獲得に向け、ついにセリエA首位に躍り出た
試金石で見せつけた“インテル強し”
首位のミランが昇格組スペツィアに敗れる前日の波乱によって、勝てば首位に立つというプレッシャーがのしかかったラツィオ戦の戦いぶりは見事だった。
リーグ戦6連勝中の難敵相手に試合を終始コントロールし、エースFWロメル・ルカクが2ゴール1アシストと大爆発。
コッパ・イタリア敗退からの再起と、スクデット獲りへ向けた絶好の試金石だった難ゲームを制したことで、“インテル強し”をライバルたちに印象づけた。
エースがハットよりも優先したもの
特筆しておくべきは、FWラウタロ・マルティネスによる3ゴール目だろう。
64分、自陣ゴール前のMFマルセロ・ブロゾビッチのパスを受けたルカクは右サイドを独走。無人の野を駆ける高速戦車はラツィオゴールへ突進し、GKとDF2人を引きつける。
そのままシュートまで行けただろうエースは、しかし、左サイドを全力疾走するフリーのチームメイトがいることを知っていた。
「さぁ、決めてくれ」とばかりに軽やかに渡されたボールをマルティネスが押し込んで完成したカウンターは、これぞチームプレーという感動的な一撃だった。
トリプレッタ(ハットトリック)も狙えたルカクが仮にあの場面でシュートを外しても、責める人間はチーム内にいない。しかし、彼は別の選択肢と仲間を信じてボールを預けた。
ゴール後、2トップは長いハグを交わした。ベンチからも仲間たちが次々に駆け寄って団子状態になり、興奮で感極まった。あのゴールはチーム全体を熱く高揚させる一撃だった。
歯車が噛み合い始めた巨大戦力
長らくの懸案だったMFクリスティアン・エリクセンの順応不足も、ミランとのコッパ・イタリア準々決勝での決勝FK以来、解消されつつある。
中盤では24歳のMFニコラ・バレッラが2シーズン目とは思えないほどキャプテンシーを発揮し、衰えの見え始めたベテラン勢をカバーしている。
歯車が噛み合い始めた巨大戦力はリーグ最多54得点、そしてリーグトップの1試合平均走行距離112.637kmを生み出しながら、順位表のてっぺんに立った。