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“中指事件”のコンテ 謝罪とユーモアを忘れず…大一番ダービーは“インテル強し”を知らしめる絶好機 

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弓削高志

弓削高志Takashi Yuge

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posted2021/02/21 17:03

“中指事件”のコンテ 謝罪とユーモアを忘れず…大一番ダービーは“インテル強し”を知らしめる絶好機<Number Web> photograph by Getty Images

ユベントスとのコッパ・イタリア準決勝で騒動を起こしたアントニオ・コンテ。しかし、チームは11年ぶりのスクデット獲得に向け、ついにセリエA首位に躍り出た

「中指でなく親指だったら…」

 覚えておきたいのは、指揮官コンテがラツィオ戦前日の会見で“中指事件”を彼なりの言葉で謝罪していたことだ。

「私たちは監督や会長である前に、社会の模範であらねばなりません。いつどこであってもそれを忘れるべきではないし、挑発や侮蔑に対して私が誤った対応をしてしまったことを謝罪します。(アニェッリ会長に対し中指でなく)親指だったら(よりシニカルかつ狡猾な返しで)良かったなとも思いますが」

 お仕着せ感の強い言い回しの後に、皮肉めいた余計な一言を加えてしまうのがいかにもコンテらしい。

 僕は少し意地悪く、謝罪はポーズだけだろうと思っているが、それでも優勝争いをするチームを率いる指揮官は、「私は自分が間違ったことを認めることができる人間ですよ」というアピールをして、内外の信用回復に努めたのだ。

『タピーロ・ドーロ』の洗礼

 カルチョの国の批判精神は、ときどき度を越えて攻撃的ですらある。

 もちろん、『タピーロ・ドーロ』賞も風刺企画で、名物とする民放バラエティ番組自体かなり皮肉色が強い。

 “今週のダメダメ賞”、金色のバクは受賞者にとって正直嬉しくないプレゼントだ。

 誤った言動や失敗は人間だから仕方ない。しかし、その誤りを認める度量を持ち、アポなしで突撃してくるリポーターをユーモア精神でいなせるか否かで、プロフェッショナルとしての印象は大きく変わる。

 冬の初め、内紛を起こしたアタランタ主将アレハンドロ・ゴメス(現セビージャ)は、『タピーロ・ドーロ』像の受け取りを無言で拒否。リポーターが車へ置いたトロフィーが乱暴に投げ捨てられるシーンがお茶の間に流れると、ファンの心象は劇的に悪化した。

 一方で昨秋、怪我で戦線離脱中に肖像権使用をめぐって突然EAスポーツに喧嘩を売り、その無茶ぶりから受賞へと至ったミランFWズラタン・イブラヒモビッチは、トロフィーを喜んで受け取った後にこう豪語し、番組を笑いの渦に変えた。

「これまでの(サッカー選手の最多受賞)記録はカッサーノの15回らしいな。俺様が記録を抜いてやるからどんどん持ってこい!」

 過去には、インテルのレジェンド主将ハビエル・サネッティ(現副会長)もミランの伝説パオロ・マルディーニ(現TD)も、黄金のバク像を受け取っている。彼らは公の場での批判を受け入れ、逆にユーモアで切り返すことで己の株を上げながら、プロサッカー選手という公人としての度量も示した。

『タピーロ・ドーロ』の洗礼を受けてこそ、大物の証ともいえる。

【次ページ】 4度目の受賞から3カ月

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