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“中指事件”のコンテ 謝罪とユーモアを忘れず…大一番ダービーは“インテル強し”を知らしめる絶好機
posted2021/02/21 17:03
text by
弓削高志Takashi Yuge
photograph by
Getty Images
イタリアには国民が認める“今週のダメダメ賞”がある。
『タピーロ・ドーロ(黄金のバク)』賞は、民放TVの長寿バラエティ番組の名物だ。96年の放送開始以来、昨年までに授与されたトロフィーは1300個以上にのぼる。
社会風刺の性格が強い企画のターゲットは、あらゆる分野のセレブで、ひとたび失言や失態を犯そうものなら内閣首相だろうがセリエA選手だろうが容赦なし。番組リポーターが賞品であるバク像トロフィーを(無理やり)手渡すべく、週ごとにアポなしで本人を突撃する。そんな庶民のガス抜き装置だ。
コンテに贈られた『黄金のバク』
「コンテさん、トロフィーですよ」
今年の2月11日、番組の名物リポーターに直撃されたのは、インテル指揮官アントニオ・コンテだ。
前々日のコッパ・イタリア準決勝2ndレグで、宿敵ユベントスと引き分けて決勝進出を逃した指揮官は、試合中にユーベ会長アンドレア・アニェッリ会長へ中指を立てるという侮辱行為をしでかした。
立場のある大人が公の場で中指を立てれば、“近寄ってはいけない人”扱いされる。その失態が受賞理由だ。
うんざり顔のコンテは番組リポーターを見るなり「放っておいてくれ」と逃げるように立ち去り、受け取りを拒否。リポーターは「このトロフィーも立派なタイトルなのに……」と皮肉をこぼして、インテリスタとアンチ派の論争を焚きつけるのを忘れなかった。
首位浮上。青黒、11年ぶりのスクデットへ
そのインテルが、ついにセリエAで首位に立った。
2月14日に行われた第22節のラツィオ戦を3-1で制し、ライバルのミランを1ポイントで逆転した。後半戦でのポイントリーダー奪取は、3冠を獲った2009-10年シーズン以来、11年ぶりのことだ。
ただし、インテルはCLでは決勝トーナメント進出ばかりか、グループ最下位となったため、ELへのスライド出場も逃し、コッパ・イタリア優勝への道も怨敵ユーベから断たれてしまった。
こうなれば、あらゆるエネルギーを注ぎ込んでスクデットを獲得するしかない。