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「緊張する感覚がわからない」松岡修造も驚く、パラ射撃の新星・水田光夏の規格外のメンタル 

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松岡修造

松岡修造Shuzo Matsuoka

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photograph byYuki Suenaga

posted2021/03/07 06:02

「緊張する感覚がわからない」松岡修造も驚く、パラ射撃の新星・水田光夏の規格外のメンタル<Number Web> photograph by Yuki Suenaga

試合ですら緊張しないという水田光夏選手。初対面の松岡さんにも冷静な対応だった

松岡:納得いかないという気持ちがあったんですね。

水田:はい。それで帰る準備をしているときに全部の試合が終わって、会場に速報アナウンスが流れて、「あれ? 今、私の名前呼ばれた!?」って。急いで大会のホームページを確認したら「名前あるよ!」となって、そこで「あー、よかったー」となりました。だから「やったー!」というよりホッとした感じでした。

パラリンピックでメダルも夢じゃない

松岡:鳥居さんは光夏さんのことを最初から「この子は世界に行ける」と思っていましたか?

鳥居:それよりも彼女の病気が進行性のシャルコー・マリー・トゥース病と聞いて、4年先の東京パラリンピックの話などできませんでした。そこを目標にするということは、病気の進行によっては途中で断念せざるを得ない可能性もあるわけですから。だから僕は「1年後の全日本選手権を目標に頑張りましょう」という話を本人にもお母さんにもしました。実は以前にもシャルコー・マリー・トゥース病の選手を指導したことがあったんですが、その選手は身体機能がどんどん落ちていってしまったんです。

松岡:でも光夏さんはその全日本選手権初出場で2位になった。

鳥居:そう、それを見て「これは行けるかもしれない」と思い、さらに2019年11月の全日本選手権で自己ベストの633.3点で優勝して「パラリンピックでメダルも夢じゃない」と本気で思うようになりました。

松岡:鳥居さんから見た光夏さんの強さって何ですか?

鳥居:僕から見たら理解できない部分をたくさん持った子で、ちょっと信じられないくらいの感覚の持ち主なんです。まず一番の強みは「力まない」こと。試合中のどんな場面でも彼女は力みません。

松岡:それ教えてほしい。僕、どうしても力が入っちゃう「力造」ですから。

水田:そういえば、車いすテニスから射撃に転向してきた選手が、「試合になるとアドレナリンが全開になって脈拍が上がるから、手が震えて銃が揺れちゃう」って言ってました。

松岡:わかります。光夏さんはアドレナリン出ないですか?

水田:はい。私、起床時の脈拍と射座に入るときの脈拍が変わらないんです。だから、以前は試合前に気持ちを落ち着けるためにゆったりとした音楽を聴いていたんですけど、今は母に言われて爆音を聴いています。

鳥居:普通の選手はテンションが上がり過ぎて失敗するんです。でも、水田選手の落ち着きは射撃にものすごくプラスになっています。

水田:でもリラックスし過ぎなのか、試合中にちょっと眠くなるっていうのがあって。

松岡:試合中に眠くなるの!? そんな人、初めて聞いた。

水田:朝が早かったとか、いろいろあって。試合では寝てないですよ。うとうとしただけ。練習のときには寝たことありますけど。

松岡:練習中でもすごいです(笑)。

(構成:高樹ミナ)

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水田光夏(みずた・みか)

1997年8月27日、東京都生まれ。中学2年生の春、手足の神経が麻痺し筋力が低下する進行性難病のシャルコー・マリー・トゥース病を発症。19歳から本格的にパラ射撃に取り組み始め、17年の全日本選手権で初出場ながら2位入賞。19年世界選手権ではエアライフル男女混合10メートル伏射で24位になり、東京2020パラリンピック日本代表に内定した。19年から全日本選手権2連覇中。20年3月に桜美林大学を卒業。白寿生科学研究所所属。

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