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「何ビビってんだよ、お前」浦和MF武田英寿が戦っていた“恐怖”を振りほどけたワケ【2年目の飛躍】
text by
安藤隆人Takahito Ando
photograph byMasashi Hara/Getty Images
posted2021/02/17 11:02
キャンプで好調を維持し、プレシーズンマッチでも結果を残しているMF武田英寿
12月12日のJ1第32節の湘南ベルマーレ戦、武田はリーグ戦初のベンチ入りを果たすと、86分に待望のリーグデビューを飾る。そこには自信を失いかけていた選手とは思えないほど、自らのプレーを伸び伸びと表現する彼の姿があった。
後半アディショナルタイムには、FW興梠慎三のポストプレーを受けて、ドリブルから左足シュート。相手GKに阻まれたが、初のリーグ戦に物怖じすることなく可能性を感じるプレーを披露したルーキーにサポーターの期待はグッと高まった。なぜここまで悩んでいた人間が、このようなプレーすることができたのだろうか。
「実戦向きなんですかね?(笑) どんなにトレーニングで自信を失くしても、試合に出ることができたら、『なぜこれまで出さなかったんだ』と思わせるほどの印象を残してやろうと思っていましたし、試合になると気持ちのスイッチが切り替わるんです。不思議ですよね、試合の時はミスしてもあまり何も思わないんです」
続く第33節の川崎フロンターレ戦ではトップ下で初スタメン。並居る先輩プレーヤーに対しても堂々と指示を出し、セットプレーのキッカーも務め、正確な左足も見せつけた。最終節の北海道コンサドーレ札幌戦でも途中出場を果たし、ラスト3節で出場機会を得る形でルーキーイヤーを締めくくった。
「何ビビってんだよ、お前」
「これも自分が思っているだけかもしれませんが、試合に出たことで、チームメイトからの信頼というか、向けられている目がちょっと優しくなったように感じたんです。同時に縮こまっていた自分にも気付き、『何ビビってんだよ、お前』という自分の心の声が聞こえてきました。ただただ、チームメイトからの目を怖がっていた自分に対して、『そうだよな、ビビっていても仕方がないよな』と会話することができたんです」
札幌戦の翌々日から参加したU-19日本代表合宿では、ミーティングで発せられた高桑大二朗GKコーチの言葉が響いた。自分の置かれた現状とリンクし、その背中を後押ししてくれた。
「自分にフォーカスを当てて、ナンバーワンではなくオンリーワンになろう」
勝手に生み出した “周囲の目”に怯えるのではなく、自分自身をしっかりと見つめて一日一日を積み重ねる。それができれば、自然と信頼を勝ち取ることができる。すべては自分次第なのだ。武田は1年を通して、それを思い知った。
「他者を気にするというより、一番は自分の試合に出るために、成長するために、主体性を持ちながらいろんな人の意見を聞くことだなと思ったんです」