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獨協大入学時「4年間、代走要員」からのドラフト指名! “2盗失敗ゼロ”ヤクルト並木秀尊が「聖地」で狙う盗塁王 

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高木遊

高木遊Yu Takagi

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photograph bySankei Shimbun

posted2021/02/04 17:00

獨協大入学時「4年間、代走要員」からのドラフト指名! “2盗失敗ゼロ”ヤクルト並木秀尊が「聖地」で狙う盗塁王<Number Web> photograph by Sankei Shimbun

ヤクルトの新人合同自主トレで笑顔を見せる並木(左)。背番号「0」を背負ってダイヤモンドを駆け回る

 無名の存在を一躍、「大学球界ナンバーワンの韋駄天」に押し上げたのも同期のマネージャー・上田樹と亀田監督だ。

 昨年のドラフト会議から遡ること約1年前。各大学へ11月末から行われる侍ジャパン大学代表選考合宿の案内が来た。同合宿では近年、連盟や監督の推薦だけでなく動画によるアピールも可能になっている。亀田監督と上田はその案内を見て「(並木は)出してよいレベルの選手だ」と決心し、上田が動画を制作。特にその俊足ぶりは画面を通してでも鮮烈で首脳陣の目に留まり、招集が実現した。全国の強豪校から選考合宿に集まった50選手の中で、2部リーグ所属は並木のみだったのだから、大抜擢と言える。

 そこで並木は50m走の計測で、中学時代に男子100m現日本記録保持者のサニブラウンに勝って日本一になった実績を持つ五十幡亮汰(中央大→日本ハム2位)をも上回るタイムを叩き出す。さらに打っても紅白戦で6打数3安打。一本の動画によりチャンスを掴み、3日間の合宿を終えた頃には文句なしの「ドラフト候補」になっていた。

仲間が作ってくれたジャニーズ級のうちわ

 最終学年は新型コロナ禍によって春季リーグは開催中止、大学の方針で全体練習も8月にようやく許可された。秋季リーグも5試合のみと半減し、1部との入替戦も中止になった。それでも並木は高いモチベーションで試合に臨んだ。自分自身のプロ入りのためだけではない。「仲間のために」という思いも強かった。

「応援の声が出せないということで、ジャニーズのコンサートみたいな顔写真付きのうちわを作ってくれたり、HIDE-METERという自分の盗塁を数えるボードを作ってくれたりしました」

 その盗塁数も着実に増やしていきリーグ戦通算24盗塁とし、4年間で二盗失敗はなんとゼロという「実戦的な」足を見せつけた。さらに活動自粛期間中に器具を持ち帰りトレーニングした成果で、より下半身が強くなり打撃も安定し走塁での瞬発力も向上。ヤクルトのスカウト陣が複数名訪れた10月21日の足利大戦では、第2打席で右中間を破る三塁打を放つと、第3打席ではレフト前安打で快足を飛ばして二塁打に。さらに犠打で三塁に進むと続く打者の内野ゴロに好スタートを切って本塁に生還。第4打席のサードゴロでも右打者では「メチャクチャ速い」とスカウトも驚くほどの一塁到達3.96秒を計測大きなアピールに成功した。

「(多くのスカウトの前でプレーし)緊張もするんですけど、チームで勝とうと思えば“自分のやるべきこと”もわかるので、それが結果につながったのかなと思います。周りも(並木なら)大丈夫と信頼してくれていたので、それが良い結果に繋がりました」

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