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獨協大入学時「4年間、代走要員」からのドラフト指名! “2盗失敗ゼロ”ヤクルト並木秀尊が「聖地」で狙う盗塁王
posted2021/02/04 17:00
text by
高木遊Yu Takagi
photograph by
Sankei Shimbun
「自分でどうにかなることではないので、緊張はそんなにしませんでした。僕よりも周りが緊張していました(笑)」
2020年10月26日。運命が決まるプロ野球ドラフト会議を前に獨協大の外野手・並木秀尊は不思議な気分で指名を待っていた。1年前の自分ならこの立場にいることを想像すらしていなかった。
「4年間、代走要員だ」
高校時代から、プロ野球は遠い世界だった。斎藤雅樹(元巨人)らを輩出した市立川口(現川口市立)の出身だが、最後の夏は埼玉大会3回戦敗退。首都大学野球2部リーグに所属する獨協大に進学したのも「教員免許が取れて、自宅から通える」が大きな理由だった。
ドラフト時に話題を集めた俊足は野球を始めた時から大きな武器だったが、大学入学当初は打撃がさっぱりで「4年間、代走要員だ」と亀田晃広監督から言われるほど。しかし、この言葉が「見返してやるという気持ちになりました」と並木の心に火をつけた。さらに東北福祉大と日本通運といった強豪で野手として活躍した亀田監督も厳しい言葉をかけるだけでなく、当てにいくような小さなスイングではなく、しっかりと振り切ることの大切さも説いた。すると並木はグングンと成長を遂げていき、2年時途中からレギュラーを掴むと3年の春秋続けてベストナインを獲得するまでになった。
獨協大が重視する「自主性」
また、獨協大ならではの環境も並木の成長を後押しした。
獨協大にはスポーツ推薦が無く、評定平均3.8以上が求められる指定校推薦や一般入試などを合格した選手たちのみで構成され、常勤の指導者も亀田監督のみ。だが、近年は社会人野球の強豪に進む選手も毎年いるほどだ。その根幹となっているのが「自主性」で、取材時も自主練習に取り組む各選手の意欲的な姿勢が強く印象に残っている。
「先輩・後輩の関係が獨協は非常に良いので、いろんなことも聞けますし、アドバイスももらえます。その中で、自分で考えられる環境もあるので自分自身を成長させてもらいました」
さらに仲間、特に同期の存在も大きかったと並木は4年間を振り返る。
「みんな仲間思いで楽しく“やりきれる”学年でした。就活などでサポートに回る選手たちも率先して打撃投手などをしてくれたり、朝早くグラウンドに出て準備をしてくれました。サポートの仲間のためにも頑張ろうと、気持ちよく野球ができました」