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71名死亡の飛行機事故から4年…シャペコエンセが2部優勝で昇格 メディアも全員泣いた合同葬での“愛”の記憶
text by
沢田啓明Hiroaki Sawada
photograph byGetty Images
posted2021/02/02 06:00
悲劇の飛行機事故から4年が過ぎた。紆余曲折あったシャペコエンセは2部優勝・昇格を成し遂げた
コパ・スダメリカーナの決勝2試合(ホーム&アウェー)は、中止された。決勝で対戦するはずだったアトレティコ・ナシオナル(コロンビア)からの申し出もあり、南米サッカー連盟はシャペコエンセを優勝チームと認定した。
「降格免除」の提案をクラブが断った
一方、クラブ関係者はいつまでも泣いているわけにはいかない。忽然と姿を消したクラブとチームを再建し、2カ月足らずで開幕する新シーズンに備えなければならない。
所用のためチャーター便に搭乗しなかったお陰で危うく難を逃れたトッツォ副会長が、暫定会長に就任。12月中旬にプリニオ・ダヴィ会長が選出されると、強化部長と新監督が、ゼロから選手を集め始めた。しかし、選手や職員の遺族への補償が重くのしかかり、クラブの財政は火の車。これを見て、国内の多くのクラブが無償で選手を貸し出した。
さらに一部のクラブが「今後3年間、特例としてシャペコエンセの降格を免除しよう」と提案した。だがプリニオ会長は「その気持ちは、涙が出るほど嬉しい。しかし、我々は他クラブと全く同じ条件でシーズンを戦いたい」として申し出を断わった。
そして何とかチームを結成し、2017年の州選手権で優勝。この年のブラジルリーグでも、クラブ創立以来最高の8位という好成績を収めた。
一度は降格を味わったものの1部復帰
ただ、そのままうまくいき続けるわけではないのがフットボールの厳しい側面である。2018年は14位にとどまり、2019年は20チーム中19位に沈んで2部へ降格した。
それでも、今季は堅守速攻スタイルで着実に勝ち点を積み重ね、第7節から16試合負けなしの快進撃。2019年8月からクラブを率いていたパウロ・マギノ会長が昨年末に急死したが、1月12日、4節を残して1部復帰を決めた。
「悲劇の小クラブ」が起こした小さな奇跡
地方クラブで財政に余裕がなく、活躍した選手はすぐさま他クラブに引き抜かれることが多い。そのような事情を良く知った上で市民は「来季、1部で旋風を巻き起こしてほしい」と切望する。
ブラジル南部の小さな町の純朴な人々が誇りとした「奇跡のクラブ」が、思いもよらぬ忌まわしい事故によって世界にその名を知られる「悲劇のクラブ」となった。そして、事故から4年2カ月を経た今、また小さな奇跡を起こした。
小さな町の小さなクラブは、ここから新たな歴史を紡ごうとしている。