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プレミアの“消えた天才”たちの今 素行不良でマンU→渡り鳥人生、計4年離脱した“ガラスの足首”…
text by
三重野翔大Shodai Mieno
photograph byGetty Images
posted2021/01/23 17:02
モリソン(左)とウィルシャーは10代の頃に受けた期待からすると、遠く離れたキャリアを歩んでいる
そして昨年夏に辿り着いたオランダの地。11月には年代別の代表を経験したイングランドではなく、ジャマイカ代表としてA代表デビューを果たした一方で、クラブでは1カ月近い負傷離脱もあり満足な出場機会を得られず、年明けすぐに契約解除に至っている。
モリソンが計11のクラブで真価を発揮できなかった理由は、彼自身のピッチ外での行いによるものが大きい。ただ彼を取り巻く環境もきっとそうさせたはずだ。
マンチェスター・U時代、ファーガソンにモリソンの世話役を任されたファーディナンドは「マスコミはラベルを助けず、彼の名前を汚した。必要なのは非難ではなく助けだったんだ。悪名が付いたこともあった。だから人は彼に会うと『いい子じゃないか』と言うんだ。メディアとはそういうものだ。彼への間違った認識を与えていた」とメディアによるモリソンへの過剰な批判があったことを指摘している。
またADOデンハーグ入団時には、かつてトッテナムやフルアムを率いたこともあるスポーツディレクターのマルティン・ヨルが「キャリアの早い時期にウェストハムなどチャンピオンシップのクラブ(当時)に行ってしまったことが原因だ」とキャリアステップに問題があると話した。
英『デイリー・メール』は18日、トルコ1部のカスムパシャがモリソンに興味を示していると報じた(同クラブはすでにチェルシーからダニー・ドリンクウォーターを獲得)。現在フリーの身であるため、移籍市場の期限はモリソンにとって無関係だ。ゆっくり慎重に、次は長く活躍できる環境を見つけてほしい。
16歳でアーセナル初陣を飾ったウィルシャーも
イングランドで大きな才能を秘めながらも、開花させられずに苦しんだ選手といえばジャック・ウィルシャーもそれにあたるだろう。
16歳256日でアーセナル史上最年少となるプレミアリーグデビューを飾ったウィルシャーは、ボルトンへの武者修行から帰ってきた後、瞬く間にガナーズの中心選手へと進化を遂げた。
10-11シーズンには当時18歳という若さでレギュラーに定着し公式戦49試合に出場。正確なボールコントロールとパス、非凡な創造性を活かしたプレースタイルは、つい最近までフィジカルコンタクトを前面に押し出すサッカーが多かったプレミアリーグの中では非常に稀なタイプで、「天才」と表現するメディアも少なくなかった。
アーセン・ベンゲル好みのスタイルだけではない。球際での強さや献身的な守備も持ち合わせており、現代のミッドフィルダーとしては完璧な存在――そう、コンスタントに試合に出場できるなら完璧なのだ。
彼がそこから大成できなかった理由についてはご存じのとおりだ。