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「お前はロナウドを知っているか?」“待たず”に守るJ1仙台シマオ・マテの原点にある名将ケイロスの言葉 

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松本宣昭

松本宣昭Yoshiaki Matsumoto

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photograph byKiichi Matsumoto

posted2021/01/21 17:01

「お前はロナウドを知っているか?」“待たず”に守るJ1仙台シマオ・マテの原点にある名将ケイロスの言葉<Number Web> photograph by Kiichi Matsumoto

インタビューしたのは1年前のキックオフカンファレンス。リーグが中断したことや本人のケガが重なったために掲載を見送ってきたが、今季も仙台でプレーすることが発表されたことで“待ちに待った”掲載となった

 実はこのインタビュー取材は、2020年のJリーグ開幕直前に行われた。リーグ序盤のプレーぶりとともに、彼の考えを紹介するつもりだった。ところが、掲載は随分と“待つ”ことになった。新型コロナウイルスの流行により、リーグは開幕後すぐに中断。さらに6月10日、トレーニング中に右膝内側側副靭帯を損傷した。6日後に手術を受け、全治8週間と診断された。復帰後も、本来の体のキレを取り戻せず苦しみ、17位に沈んだチームをベンチから見つめる試合も多かった。

 慣れない国での自粛生活、そんな中で負った大ケガ。それでも、きっと彼は復活すると信じている。インタビュー時に、こんなエピソードを教えてくれたからだ。

「実は、私をギリシャに連れて行ってくれたのは、コロンビア代表監督(当時)のカルロス・ケイロスさんなんです。彼のおかげで、私はパナシナイコスに加入することができました。ところが移籍から4カ月ほどは、ほとんど試合に絡むことができず、出場できても終了間際の2、3分間でした。ある日、私はカルロスに電話をして『もう、家に帰りたい。試合に出られないから、帰りたいよ』と伝えたんです」

 ケイロスは、落ち着いた声で聞き返した。

「本当に帰りたいのか?」

「はい」

「お前は、クリスティアーノ・ロナウドを知っているか?」

「はい」

「クリスティアーノがマンチェスター・ユナイテッドに移籍した当初は、3カ月が経ってもほとんど試合に出られなかった。それでも今、彼は世界ナンバーワンの選手になっている。もし、お前が本当に家に帰りたければ、帰ってもいい。ただし、世界のトップ選手は常に前を向いている」

 マンチェスター・ユナイテッドのコーチとして、実際にロナウドを指導した人物の言葉は、シマオ・マテの芯の部分を変えた。

「過去」よりも「未来」を見るべき

「あの言葉をもらって以来、家に帰りたいと思ったことは一度もありません。試合に出られなくても、いつかはチャンスが来ると信じるようになった。私が、あのメッセージから汲み取ったのは、過去を忘れて、常に前を向いているべきだということ。過去も大事ですけど、未来で、自分が得たいものに集中して、努力していきたい。ベガルタや、日本の若い選手たちにも、自分が将来どうなりたいかを想像して、それに向かって努力してほしいと思っています」

【次ページ】 “待たず”に守るマテが待ちきれない

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