球体とリズムBACK NUMBER
【極寒のロシアへ】齊藤未月が語るルビン・カザン移籍 決断の奥底に「湘南産」のベルマーレ愛
text by
井川洋一Yoichi Igawa
photograph byGetty Images
posted2021/01/08 11:01
齊藤未月のハードワークは東京五輪世代でも屈指だ。ロシアの地でさらに磨かれるか
U-23代表の練習後で疲れているはずだったが、そう語る齊藤の目は期待に輝いていた。きっと彼の頭のなかには、ロシアで成長を遂げる自身の姿が思い描かれているのだろう。これまで、何度も壁にぶつかりながら、ひとつずつ乗り越えたように。
「サッカーが一番のヨーロッパ。たくさんの声援がある熱狂のなかで、自分がどこまでできるか。面白そうですよね」
ラストパスやゴールを意識した2020年
ジュニア時代から湘南の下部組織で育ってきた齊藤は、常に自分で課題を見つけ、真摯に取り組んできた。この1年でも、成長の跡は大きい。2020年シーズンは、それまでの守備的なポジションから1列高い位置を任されることが多く、「ラストパスやゴールを意識して」プレーしていたという。
そんな「新たな自分の役割が掴めてきた」頃の11月、横浜F・マリノス戦とヴィッセル神戸戦で、自身初となる2試合連続得点を記録。神戸戦の長距離のループシュートは、11月のベストゴールとなっただけでなく、シーズン最優秀ゴールに選出された。中盤の右で自ら相手ボールを奪い切り、即座に放って決めた超ロングシュートだ。齊藤の持ち味が凝縮されたシーンだった。
「良い形でボールを奪えてゴールを見たら、GKが前に出ていたので、思い切り打ちました。3連勝がかかっている試合だったので、結果に繋げられてよかったです。あのゴールは自信にもつながりました。でも、もっと決められるようになりたいですね」
「湘南から直接、海外に出たい」
湘南で生まれ育ったクラブの象徴的な選手が、自身の夢を叶えるために海を渡る。齊藤のベルマーレに対する想いは強く、これまでにも常々、「湘南から直接、海外に出たい」と言ってきた。彼が有言実行を果たしたことで、クラブは今後、買取りが決まった時の移籍金だけでなく、さらにその後に移籍金が発生する際には然るべきパーセンテージを受け取ることになるという。
それこそ、齊藤が望んできたものだ。湘南のアカデミーの選手たちにクラブハウスを作りたいという、もうひとつの夢の一助になれば嬉しいと話す。
また、ベルマーレで指導を受けた浮嶋敏監督や曺貴裁前監督への感謝も口にした。