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《下克上の箱根駅伝》四強でも古豪でもない…なぜ出場4回目・創価大が“ダークホース”になり得たのか?
text by
佐藤俊Shun Sato
photograph byNanae Suzuki
posted2021/01/03 21:00
大波乱の箱根駅伝を演出した創価大学の下克上。往路では、2位駒大に2分以上の差をつけてゴールした
11月1日に行ったハーフマラソンの練習では、かなり気温が高いなかで63分台を12、13名の選手がマークしたという。12月の箱根駅伝の調整合宿前に15キロの単独走をした時は、30秒の時差スタートをして、昨年の米満怜(創価大-コニカミノルタ)のタイムを9人がクリアした。
「米満が9人いるなってことで、みんな自信をもってくれた。そういうところで、今回の箱根は例年以上に安心感がありました」
今大会の箱根駅伝に向けて、十分戦えるだけの手応えを、榎木もチームも掴んでいたのである。
“謙虚さ”が導いた「決してラッキーではない」優勝争い
チームでは、前回大会9位の結果を踏まえて、今年の箱根は3位という目標を掲げた。榎木は「高いかな」と感じたそうだが、選手が自主的に決めたことに口を出さなかった。
その結果、悔しい思いもあるが2位という好成績を残した。監督に就任してから9位-2位とくると、次はもう優勝しかない。
しかし、榎木は冷静だった。
「いや、まだ今年の3位という目標も高すぎるかなって思っていたので、そこを確実にクリアしていくことをまずは続けたい。そうして、出雲、全日本に出場して、上位に入るようになって、しっかりとした自信を得られた時に『箱根優勝』というのを口にできるのかなと思います。まずは、箱根3位をもう1回クリアできるチームにしていきたいですね」
この謙虚さこそ、創価大の強さだろう。
指揮官は浮かれることなく、地に足をつけて今後を見据えている。選手は結果が出るとちょっと鼻が高くなりがちだが、指揮官が踊らないからすぐに冷静なチームに戻れる。こうした榎木の姿勢と取り組みが、創価大の選手の成長を促すことになった。
「自分が思った以上のスピードで、選手たちが成長しているのですごく頼もしい」
榎木は、笑みを見せてそう語った。
今回の結果は決してラッキーではなく、蓄えてきた実力を発揮したものだと言える。そしてこの悔しい経験も榎木監督は力に変えていくだろう。
来年の創価大は、もっと怖い存在になって箱根に戻ってくるに違いない。