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「3年て早いなあ」ダルビッシュ有がパドレス移籍決定までを自ら“実況中継”したのはなぜか? 

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ナガオ勝司

ナガオ勝司Katsushi Nagao

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posted2020/12/31 11:10

「3年て早いなあ」ダルビッシュ有がパドレス移籍決定までを自ら“実況中継”したのはなぜか?<Number Web> photograph by Getty Images

ダルビッシュ有投手がパドレスにトレードで移籍することが正式発表された

なぜダルビッシュ投手のトレードは行われたのか?

 カブスは2016年、

(1)ドラフト指名で有力なアマチュア選手を獲得する。

(2)既存の主力選手を放出して、他球団の有力な若手選手を獲得する。

(3)ファームで育成した(1)と(2)の若手選手たちの「何人か」をトレードの交換要員として、他球団の有力な選手を獲得する。

(4)プレーオフ進出を狙える戦力が整った時点でフリーエージェント(FA)で有力選手を獲得する。

 という昨今流行りの手法で、実に108年ぶりという歴史的なワールドシリーズ優勝を果たした。

 ただし、MLB王者となった2016年、カブスの選手年俸総額は約1億7285万ドル(開幕時。1ドル104円換算で約179億円)でMLB4位だった。今季の選手年俸総額は8058万ドル(日本円で約83億円)と大幅に減少したが、それは今季が「日割り年俸の満額支給の60試合分」だったからで、MLB全体ではやはり4位の高額球団だった。

 ダルビッシュを獲得したパドレスも今季は年俸総額7632万ドル(同約79億円)で、カブスに次ぐMLB6位と高額球団だったが、カブスが2015年のナ・リーグ新人王にして2016年の同最優秀選手であるクリス・ブライアント内/外野手や、ハビアー・バイエズ内野手ら、今後の契約更改で高額での契約更改が確実な主力選手を多く抱えているのに対し、パドレスはフェルナンド・タティス・ジュニア内野手やトレント・グリシャム外野手、ジェイク・クローネンワース内野手ら、比較的安価で契約更改できる主力選手が多く、カブスに比べると補強がしやすい状況だった。

 現実にはそういう長ったらしい記事を書き連ねることだけが我々メディアの仕事ではないし、我々の仕事がMLBからある種のリスペクトをされ、特殊な関係に守られているお陰で、今回のトレード話も「1つの話題」として提供されたわけだ。機密情報であるはずのトレード話がチーム関係者からメディアに漏れる構造があるからこそ、前田投手がTwitterで書いたように「メディア先走りシステム」が成立しているのは事実で、それが本当にオフの「ストーブリーグ」の楽しみなのだとしたら、今後もその状況は変わらないだろうと思う。

メディアではなく、「選手が語ること」が先行する?

 だから、チーム関係者が漏洩した情報が記事になり、それを受けた当事者である選手たちが、自身のSNSで「本当に起こっていること」を語るというような事態は、今後も起こると思う。

 そして、ダルビッシュ投手のように、選手自身がその大事な時に「ライブ」で自らの現状を生々しく語ることが普通になったら、メディアの立ち位置も随分と変わってくるだろうな、と思ってしまう2020年の年の瀬であった。

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